会社分割における税法上の問題点     
目 次
はしがき
第一章 序説
一 問題の所在
二 租税回避
第二章 会社分割
第一節 会社分割の目的と法的規制
一 会社分割の目的
二 会社分割に対する法的規制
第二節 会社分割の形態
一 分割の概念
二 分割形態とその評価
三 分割会社の形態
四 現行法上で認められる分割形態
第三節 会社分割に関する法整備の要請
一 会社分割規定立法化の要請
二 NTT分割の動向
第四節 諸外国の会社分割の状況
一 フランス商事会社法
二 EU会社法調整に関する第六指令
第三章 会社分割における税務上の取り扱い
第一節 我が国における税務上の取り扱い
一 会社分割にかかる課税制度の沿革
二 営業譲渡による会社分割
三 現物出資による会社分割
四 会社分割における企業会計上の取り扱いとその問題点
五 課税上の取り扱い
第二節 米国における会社分割
一 会社分割における米国税法の取り扱い
二 課税の沿革
三 会社分割を非課税とする理論的根拠
四 原則的要件
第四章 会社分割立法化での問題点
第一節 会社分割立法上の問題
第二節 租税回避と税法上の防止策
一 米国の裁判例
二 租税回避の可能性とその防止策
第五章 総括
参考文献

第一章 序説

ここ数年、日本電信電話株式会社(NTT)の分割問題や米国でのスピン・オフを利用したITTなど会社分割が頻繁に報道されるように、会社分割が今大きくクローズアップされている。
会社分割を求める産業界からの要望は、昭和40年代の貿易の自由化に対応するために始まり、また最近の我が国を取り巻く経済環境、企業活動の急速な国際化などによる情況の中で、企業は会社分割を含めた広範な企業基盤の整備を迫られている。
しかし、我が国商法では、会社分割に関する直接的な規定はなく、現物出資、財産引受、事後設立、営業譲渡・譲受けなどの手続きを利用した分社を行っているにすぎない。
会社分割に伴う税務上の取り扱いとしては、法人税法上の特定の現物出資の規定や消費税法の資産の譲渡等の規定などわずかな範囲に限定されている。これら租税法上の取り扱いは会社分割の可否を決定する大きなメルクマールとなっている。
本稿のテーマである会社分割を租税法から検討する場合に、税制が経済的中立を保てるか、あるいは公平原則に反しないかなどと共に租税回避行為の防止は十分かを注視しなければならない。
しかし、この場合の租税回避とは何か。そして租税回避が行われた場合には、何を根拠に否認されるかについては、決して一義的に明らかにされてはいない。
租税回避は、脱税(tax evasion)とも節税(tax saving)とも
異なる。脱税は、課税要件の充足の事実の全部又は一部を秘匿する行為であるのに対して、租税回避は、課税要件の充足そのものを回避する。また、節税が租税法規が予定しているところに従って税負担の減少を図る行為であるのに対して、租税回避は、租税法規が予定していない異常な法形式を用いて税負担の減少を図る行為であるとされている。この様に租税回避とは、脱税でも節税でもなく、
これらの限界は必ずしも明らかでない。租税回避を問題とすべき背景には、租税回避を行った者が、不当な利益を受け、通常の法形式を選択した納税者との間の不公平は是正されなければならないと考えられるからである。

第二章 会社分割

第一節 会社分割の目的と法的規制

企業が、会社を分割する目的には、企業組織の再構築を目的とするもの、複数社の事業の統合を目的とするもの、事業転換を図るために事業部門の一部の売却を目的とするもの、新会社への人員の移転等による人材の登用など労務対策上の目的によるもの、税務上のメリットを活用するため、あるいは企業結合規制をクリアするためなど多様なニーズがあげられる。

第二節 会社分割の形態 一 会社分割の形態には、会社の財産を分割のために新設された二 つ以上の会社に出資して自ら解散し、各新設会社の株式は解散会 社の旧株主に取得させる完全分割、会社がその資産の一部を他の 会社に出資してその後も存続する不完全分割そして会社を分割し て二つ以上の会社になるというだけでなく、その分割された一部 分が同時に他の会社と合併して、一つの会社になる分割合併があ る。
二 会社分割を企業成績評価をするモニター(コーポレ−ト・ガバ ナンス)からみたときの分類としては、分社型、持株会社型そし て会社分割型の分割パターンが考えられている。

分社型では、分社後も親会社は独自の事業を営むため、親、子 会社の間で利害の対立など利益相反の問題も起きやすくなる。持 株会社型とは、会社を数個に分割して親会社が、いわゆる純粋持 株会社になるというもので、親会社は、独自の事業を営まないこ とから親・子会社間の利害の対立がおこり難くなり、会社分割型 に近い。会社分割型は、分割会社間では対等な関係になり、それ ぞれの会社の株主によるモニターを受ける分だけ株主保護の面か らはより優れている。
三 現在、実務上用いられている分社化としては、現物出資、財産 引受、事後設立や新会社による新株発行に対する現物出資がある が、平成2年の商法の改正までは検査役調査が不要であった事後
設立による方法が多かった。それ以後は検査役調査が必要となっ たため、決定的な差はなくなっているが、新会社設立時期の確実 性の観点から、商業登記上、会社設立時は弁護士や不動産鑑定士 の証明が不要で、その後体制が整備された後に営業譲渡を行える ことからなどから依然として事後設立によるニーズは少なくない。
四 現行法で、資本関係を含めた会社分割をしようとする場合には、 減資の対価として子会社株式を給付する方法が考えられる。この 方法は、まず、分社の方式によって新設子会社株式を取得する。 その後、被分割会社(親会社)は、有償消却により減資を行い、 消却する株式の対価を現金の代わりに分社により所有した子会社 株式を、親会社の株主に分配する方法をとる。しかしこの方法が 適法であるかどうかは、意見が分かれている。

第三節 会社分割に関する法整備の要請

会社分割に関して、昭和43年の経済団体連合会の要望が出されて以降、今日まで数多くの意見、論文が出され、最近では、NTTの分割論議もでて、分割法制が求められている。
また、NTTの分割論議は、国際競争力に耐えうる企業体質の構築を理由として昭和57年以後議論され、平成8年12月になって、分離・分割問題が、郵政省とNTTの間で大筋合意されている。

第四節 諸外国の会社分割の状況
一 諸外国の商事法における会社分割の規定としては、1966年に制 定されたフランス商事会社法と1982年のECの会社分割に関する 第六デイレクティブがしばしば参考にされる。
二 フランス商事会社法では、完全分割、分割合併と不完全分割に よることを規定すると共に、税制上も、大蔵省の承認(ministe- rial approval)を条件として優遇措置が付与されている。
三 EUにおいては、会社の分割に関する規定の調整を目的とする 第六デイレクティブが定められている。主な内容は、規制の対象 となる会社分割の範囲、株主に対する事前開示など株主保護や債 権者保護の規定など詳細な規定をおいて、加盟国に求めている。
第三章 会社分割における税務上の取り扱い

第一節 我が国における税務上の取り扱い
一 我が国の商法は会社分割について規定はおいていないが、実務 上では会社分割(分社)と同様な手法が用いられいる。しかし税 法上はこれら分割に伴う資産の移転については通常の譲渡と同様 な課税関係が生じるが、各種政策的な見地から一定の要件を満た す会社分割については課税の特例を設けた。
二 税法が会社分割に関する取り扱いを定めたのは、昭和17年の臨 時租税措置法において、企業合同のために現物出資の規定に始ま り、その後幾多の変遷の後、昭和40年に現行取り扱いを定めた法 人税法第51条による特定現物出資の課税の特例が制度化され、ま た平成3年には租税特別措置法第66条で、出資資産中に土地等が

ある場合の圧縮限度額の制限規定を設けた。
三 税法においては、現物出資も譲渡として取り扱われるため、現 物出資時に、資産を時価により譲渡したことになり、時価と帳簿 価額の差額の譲渡損益が生じる。しかし、現物出資により子会社 を設立する場合には、現物出資した財産が子会社の株式に代わっ ただけで、実質的には子会社株式を所有するという形態を通じて、 その現物出資した財産を継続して所有支配していることと変わり がないことから、一定の要件を満たす現物出資(特定出資とい う)により子会社を設立させる場合には、出資資産の譲渡益を子 会社株式等の帳簿価額を減額(圧縮記帳)して圧縮損を計上する
ことによって消滅させている。この特例は、変態現物出資による 場合でも一定の要件に該当すれば適用され、実務上もこれによる 場合が多い。
四 現物出資における現行税法上の問題点としては、現物出資とそ の他の出資との評価の問題、変態現物出資における譲渡の時期 の問題や外国子会社の現物出資における現地法との関係など、 要件の厳しさと相まって、現行法での会社分割を困難としている 点にある。

第二節 米国における会社分割
一 米国では、会社法上に会社分割の規定はないが、以下の方法に より会社分割が行われた場合には非課税措置がとられ、その中心 となる規定はI.R.C.355条で一括非課税の規定を定めている。
1、スピン・オフ(spin-off)による会社分割

スピン・オフとは、親会社となる法人が資産の一部を分離して 別会社(子会社)を設立し、その子会社株式を親会社の株主に交 付することによって、一つの会社を二つ以上の会社に分割する方 法である。
この形態には、@新設子会社の株式を分配するもので、親会社 が5年以上にわたって積極的事業活動をしてきた資産を出資する方 法と、A既存会社の株式を分配するもので、これにはイ,親会社が 5年以上所有している子会社の株式を分配する方法、ロ,親会社が 5年以上所有している子会社に5年以上にわたって積極的事業活 動に活用してきた資産を現物出資する方法の二つがある。
2、スプリット・オフ(split-off)による分割
親会社が、その所有する子会社株式(新設又は既存子会社)を 親会社の株主に分配する点では、spin-offと同じであるが、子会 社株式と交換に親会社の株主が持っている親会社株式を親会社に 給付するところがspin-offと異なる。
なお、分割後に存続する会社は、共に、積極的事業活動を行っ ていなければならない。
3、スプリット・アップ(split-up)による分割
親会社が、2以上の子会社を設立し、資産をそれぞれの別法人に 譲渡して別法人の株式を取得後、親会社株式と交換に株主に子会 社株式を交付する。そして、親会社は完全に清算する。
なお、分割後に誕生する新会社は、積極的事業活動を行ってい なければならない。また課税上の取り扱いは、spin-off、split- offと同様となっている。
二 米国内国歳入法が、法人分割を非課税として認める理論の根拠 としては、事業の所有者が事業を継続しながら単にその実体が変 わっただけで、どのような組織で法人事業を行うべきかという経 営上の選択は企業に任せるべきで、税法が干渉すべきでないこと をあげている。
そこでアメリカ法人税では一定の要件の基に会社分割を課税し ないとした。すなわち、アメリカ法人税では、あくまでも会社の 実体は継続している点に重点を置き、これを補強するために、
355条が適用される要素として支配要件、積極的事業活動要件、
5年要件、分配要件、それに手段要件とする原則的要件を定めた。

第四章 会社分割立法化での問題点

第一節 会社分割立法上の問題
一 会社の一部門を分離独立させ、かつ、その分割会社の株式を被 分割会社の株主に交付するという会社分割の手法については、米 国とEUおよび欧州諸国では、全く異なった対応をしている。

我が国で、会社分割に関する規定を導入するにあたり、米国と EUおよび欧州諸国のいずれのアプローチをとるかの検討がされ なければならない。通商産業省の委託を受けた研究報告では、米 国型およびEU型について、それぞれのメリットがあり、今後二 つのアプローチを共に検討すべきだとしている。併せて、同報告 では、税制に関しては、会社の分割は資産の譲渡ではないため当 然に課税関係は発生しないとし、新株を株主に分配する際の譲渡 益課税(対被分割会社)、配当所得(対株主)の課税の繰延措置 の創設、税制の中立性確保および国際的整合性の観点から、我が 国にも連結納税制度の導入の検討を求めている。
二 会社分割法制については、本稿で検討した範囲では、諸外国に おいて商法典中に規定を設ける傾向にあると思われる。これは、 株主保護、債権者保護の観点からばかりでなく、明確化、画一化 した会社分割を可能にするために必要であろう。会社分割の大半 を米国型のように税制のみで対応するならば、分割の自由度は広 がるかも知れないが、逆に自由は不自由を広げることになり、細 かい税制上の対応をせまられることになるであろう。この結果、 逆に会社分割を阻害することにもなりかねない。

第二節 租税回避と税法上の防止策
一 会社分割(組織変更)で租税回避の問題が争点となった米国の 裁判例にGregory事件がある。

この事件は、会社分割において、“事業目的の原理”を確定し た判決として有名である。この事件の概略を示す。
グレゴリー夫人は、時価が大幅に値上がりしたM社の株式を保 有していたU社の唯一の株主であった。グレゴリー夫人は、値上 がりしたM株を売却したいと考えたが、U社がそのまま売却すれ ば多額の法人税の課税を受け、またM社株式をU社からグレゴリ ー夫人に無償で移転すれば、時価相当額の配当課税を受けなけれ ばならなかった。
そこで、これら課税を回避するために、A社を設立し、数日後に U社は新設したA社に所有していたM社株式を移転し、直後、グ レゴリー夫人にA社株式の全部が分配された。グレゴリー夫人は 直ちにA社株式の全部を譲渡しキャピタルゲインを手に入れた。
なお当時の歳入法では、法人の解散による分配は、解散法人の株 式の譲渡又は交換によるキャピタル・ゲインとして扱われ、しか も、長期キャピタル・ゲインについては、他の所得と分離した比 例税率(12.5%)により課税されていたため配当所得課税を受け るより遙かに有利であった。これに対して、原審租税訴願庁は、 法が組織変更について明確に規定し、納税者の行為がそれらの要 件を満たしている以上、これを否認することはできないとして、 法を文言通りに厳格に解釈して、納税者の主張を認めた。
これに対して控訴裁判所及び最高裁判所では、これら取引が、 事業目的ないし会社の実体を持たない取引にすぎないとしてグレ ゴリー夫人の主張を退けた。
二 前記の会社分割における税制上の要望については、税制上の優 遇措置を講じることによって、課税ベースに歪みが生じ課税の公 平が損なわれないか、あるいは、安易な租税回避の道をつけるこ とにならないかなど十分な検討がなされなければならない。
以下、租税回避の可能性について検討する。
1,会社分割に伴う被分割法人の譲渡益課税について
我が国税法では、法人に財産を出資して、その株式を取得する ことは、「資産の譲渡」として課税を受けることとされている。 この様な考え方は、アメリカの所得税理論でもあるとされている が、我が国税法でも、資産の譲渡とは、有償無償を問わず資産を 移転させる一切の行為をいうものと考えられている。この様な課 税ベースの決定は税制が独自に決めうるものであり、極めて不合 理な扱いでない限り妥当とされる。「課税」を原則とした場合に、 例外として課税の繰り延べを図るかはそれぞれの国で政策におい て認められるべきものであり、我が国が繰り延べを認めないこと からといって、一律不合理であると論ずることはできない。
2,株式の取得に伴う配当課税について
我が国所得概念では、経済的な利得を所得として捉え、利益処 分によって株主に分配する利得を配当所得として課税している。 また法人が利益積立金額の資本または出資への組入れを行なっ た場合にもその組入れ額等のうち各株主の所有する株式等に対応 する金額は利益の配当または剰余金の分配とみなされ配当所得と して課税される。次に配当に絡めた節税策を次の設例で考える。
(設例1)A社は、その所有の資産(帳簿価額1千万円、時価1億 1千万円)を売却し、株主に配当の支払いをしようとした。この 場合、A社はその資産の売却益による法人税を、A社株主は配当 所得として、所得税による課税を受けることになる。
そこで、株主に配当する代わりに、新設分割会社B社に資産を現 物出資して、新たに創設される会社分割の非課税規定を適用して 株主にB社株を分配すれば、配当課税を受けることなく利益の分 配をすることができる。
この場合の株主は最高税率の課税を受ける個人で、法人税等の 実効税率は50%として、税額の概略を試算する。
@通常の方法による配当が行われた場合
法人税額は、1億円×50%=5千万円
配当所得にかかる所得税は、
5千万円×65% − 5千万円×5%=3千万円
(住民税を含む最高税率) (配当控除)
A会社分割を利用し、分配された分割会社の株式を売却した場合
法人税額(被分割会社)は、 ゼロ円
分割会社株式の売却による所得税額等は、
5千万円×26%=1.3千万円(取得原価等を0とした)
となる。そして被分割会社の法人税等の課税は永久に失うこと になる。結局、非課税規定の創設される会社分割を利用すれば、 8千万円の納税が1.3千万円で済むことになる。
もちろん、分割会社が当該資産を売却すればそのときに法人税 等の課税は受けるが、それまで課税が繰り延べられ、それが長期 で有れば、非課税となんら変わらない。
(設例2)それぞれの会社の所有する他社株式を会社分割を利用す ことによって課税を受けずに交換することができる。
A社の有するX株式とB社の有するY株式を交換しようとする 場合に、A社はX株式を出資資産とするA’社を設立し、B社は Y株式を出資資産としてB’社を設立して、その後、A社はB’ 社と、B社はA’社とそれぞれ合併すれば、A’社、B’社の設 立時には課税されずに、結果としてA社、B社は課税されずにX 株式、Y株式の交換をすることができる。
(設例3)会社分割を利用してその所有する土地を直接売却する代 わりに新会社に移転し、株主がM&Aにより、新会社を土地ごと 売却することができる。
この場合には、含み益のある土地を直接売却すると、多大な法 人税と留保金課税及び土地重課による課税を受ける畏れがある。 これを避けるため、会社分割により一旦新会社に土地を移転し、 代表者が取得した株式を土地購入希望者に会社ごと売却する方法 をとれば、法人段階での課税が回避され、代表者個人の所得税と して、総合課税となる配当所得の課税を受けず、結果的に利益の 配当を受けることになる。
(設例4)会社分割で、利益積立金などの積立金も分割の対象とし た場合には、同族会社に対して、通常の法人税のほかにその内部 留保に対して特別税率を課する留保金課税を回避の手法として会 社分割を利用することができる。
これら手法を用いることによって節税をはかる道が開かれ、場 合によっては租税回避の問題を生じることになる。これを防止す るための防止策について考えてみる。
*会社分割の税制上の対応としては、米国の場合と異なり、原則 課税とすべきで、経済実態が連続・一体となっている分割のみ 例外として非課税措置が採られるべきである。米国では、原則 非課税としたために租税回避を防止するために、広範・複雑な 規定を設けて課税の道を開き逆に曖昧な取り扱いとなっている。
*分割後の株主持分構成は、分割前の株主のそれと同一であるこ とが望ましい。一部金銭による場合や、持分割合が違う場合に は利得が現実に実現することから株主に新会社株式を分配す るときに配当課税を行うべきである。
*株式を分配する分割会社は、原則新設会社とすべきである。な ぜならば、既存会社の株式の分配では配当の代用として利用さ れ易く、何も子会社株式だけ特別に扱う特段の理由がないから である。
3,連結納税制度について
連結納税の制度を求める要望は、持株会社問題を含め、産業界 を中心に出されている。連結納税をとることによる納税者の利点 は、(a)メンバー法人間の損益通算が可能になること、(b)法人間 分配が非課税であること、(c)法人間取引について課税繰延がなさ れることがあげられる。
連結納税制度を導入するとしても米国税法に習い広範な制限を 当初より設ける必要があろう。今後これらについての検討がなさ れるであろうが、ここではいくつかの検討すべき事項について述 べる。
@関連会社の判定では議決権株式の何%の所有が適当か検討され
なければならないが、経済同一性をとる理論の基では会社間の 関連度は大きい方が望ましい。
A繰越欠損金の通算可能な範囲を特定すべきである。
B連結会社の範囲について検討されるべきである。
C関連会社間取引については、会計処理方法など十分な検討がな
されなければならない。
D法人住民税などの地方税の納税額の配布方法についての検討も
なされなければならない。

第五章 総括
一 本稿のテーマは、会社分割における租税回避の可能性とそれを どのように回避するかを検討することにあった。

残念ながら会社分割が法制化された場合の租税回避の可能性と その対策方法については、ほんの一部しか述べることができなか った。また、米国における会社分割に於いて、株式の他に不適格 資産(boot)の交付をする場合もあるが、これらについては設例 を複雑にしないため触れていない。
我が国でも実際に法制化される段階では、この様な交換差金の 取り扱いも検討しておかなければならないが、今後機会が有れば 研究を続けていきたいと思っている。
二 本稿に於いて会社分割についての検討を進めている最中にNT Tの持株会社による分割方針が打ち出された。この場合現在のN TTは、純粋持株会社となり、その下に長距離通信会社と二つの 地域通信会社に再編成されると言う。この場合の地域通信会社は 1社の売上高は年間3兆円、従業員数もそれぞれ8万人を超える 大子会社が出現する。現有NTT株主は純粋持ち株会社の株式の 所有を通じて分割会社を間接的に所有することになる。これら分 割会社は現NTTの資産の移転(出資)を受けることになるであ ろう。この場合に譲渡益の課税を回避するためには、現行の特定 出資による課税上の特例による手当では、完全にカバーすること は困難であろう。特別に立法措置を採る場合には、一般の会社分 割でも同様な取り扱いをすべきである。何故ならば、法の整合性 という観点からしても、NTTのみ特別扱いにする理由はないか らである。
三 会社分割にかかる法制が設けられたときに、税法上は、現行の 課税ベースを極端に崩すことなく分割法制を有効なものとすべく 課税上の措置を講じる必要があるであろう。
この場合に、会社分割という会社の人格の同一性が保たれた関 係において認められるべきであると考える。この場合の「人格の 同一性」の認識する要件として、米国における基本原則を参考に しつつ、我が国の経済構造にあった原則を見いださなければなら ない。また、現状での分社化に於いての税務上の取り扱いすら多 岐にわたる定めを置いていることを思うとき、今後予想される会 社分割税制においては、今後、細部についての検討がなされなけ ればならないであろう。そしてそれは、法令化され、明確な規定 の下におかれなければならない。
以上

    

Last Updated: 26/MAY/1997