ケーススタディ税理士のための法律学講座

「公示送達」                       2001.6.29

                               中江博行

 

Q.わが社は、最近立ち退きを求められて数度にわたって移転をしたため登記簿上の住所には所在していなかった。所轄税務署長は、当社の過年度分の法人税等の賦課決定処分をするに当たり、交付送達することができなかったことから公示送達に付した。その後法人税等の課税処分のなされたことを知ったが、すでに公示送達により送達されたとみなされた日から2ヶ月を経過していたため処分の取消は却下された。知らない間になされた処分は有効で甘受しなければならないのでしょうか。

 

A.

 あなたのご質問は、国税通則法第14条に規定されている“公示送達”に関するものだと思われますので、それについてご説明いたします。

 

1.公示送達の概略

 民事訴訟法上、送達とは、当事者その他の利害関係人に対して訴訟上の書類の内容を了知させるために法定の方式に従ってされる行為(民訴98〜113)で、送達すべき書類を交付する“交付送達”を原則としています(民訴101)。また当事者の住居所が不明で通常の送達方法がとれない場合に、出頭すれば送達書類を交付する旨の書面を裁判所の掲示場に掲示する“公示送達”が認められています(民訴110〜113)。

 そして税法上にもこの“公示送達”の規定がおかれています(通則法14条)。この規定は、国税通則法12条(書類の送達)の規定により送達する書類について、その送達が困難な事情があると認められる場合には、税務署長その他行政機関の長は、その送達に代えて公示送達することができるとしています。本来送達は、交付送達又は郵便による送達によるべきですが、それができない事情がある場合に補充的に通常の送達に代えて、公告をして、一定期間の経過した時に送達があったものとみなすものです。

 

2.公示送達の要件

 公示送達ができる要件には、次の二つがあります。

 一つは送達を受けるべき者の住所及び居所が明らかでない場合で、もう一つは外国においてすべき送達について困難な事情があると認められる場合です。

 前者の「住所及び居所が明らかでない場合」とは、送達を受けるべき者、すなわち国税に関する法律に基づいて税務署長等が発する書類の宛先である納税者について、通常必要と認められる調査(市町村役場、近隣者、登記簿等の調査)をしても、なお住所等が不明の場合をいいいます(通則通達14条1)。この調査は、およそ考え得るあらゆる方法による調査を尽くすことまでは要求するものではありませんが、通常必要な調査をすれば、住所等が判明すべきであったにもかかわらず、単に一回限りの郵便による送達があて先不明で返れいされたこと等を理由として通常必要な調査をしないで、公示送達をしたときは、公示送達の効力が生じないとされています(東京地判昭和44年3月5日、時報558号45頁)。この通常必要な調査とは具体的事案との関係において決すべきもので、一律に決まったものではありません(東京地判昭和46年5月24日、訟月18巻4号553頁)。

 例えば次のように裁判所が判断したものがあります(東京地判昭和59年9月28日、税資139号662頁)。税務署長の担当職員は、近隣や町内会への聞きあわせ、住民登録の調査、固定資産税関係の調査、郵便局の転出届関係調査、子供の通学校の調査、所轄警察署への聞き合せ、水道局調査と、通常考えられる調査手段を尽くして納税者の転居先を捜索しましたが、納税者が転出届や郵便局への転居届の手続を経ていなかつたため、ついにその転居先を把握しえなかつたもので、このように手段を尽くしても納税者の住所及び居所が判明しなかつた以上、これは通常期待し得べき方法による調査を実施しても知れない場合に該当すると認められることから、課税庁において本件処分の通知を公示送達に付した点に違法はないとしました。

 なお、納税者が戸籍の附票を調査すれば、原告の転居先を容易に知り得たとの主張に対しては、戸籍の附票とは住民登録と戸籍との間における基本的な記載事項に矛盾がないようにするために設けられているもので、本来人の居住関係を登録することを目的として作成されるものではないから、人の居住関係について、住民基本台帳以外に戸籍の附票まで調査しなければ、通常期待される調査を尽くしたとはいえないということはできないとしています。

 外国においてすべき送達につき困難な事情があると認められる場合とは、書類の送達をしようとする外国につき国交の断絶、戦乱、天災、または法令の規定等により書類を送達することができないと認められる場合です(通則通達14条2)。

 

3.公示送達の方法

 公示送達は、送付すべき書類の名称、その送達を受けるべき者の氏名と税務署長その他の行政機関の長がその書類をいつでも送達を受けるべき者に交付する旨を記載した文書を、送達すべき税務署長その他の行政機関の長の属する行政官署の掲示板に掲示する方法により行なわれます。この掲示は、公示送達の効力が生ずるまでそのままの状態で置かれますが、その間に掲示した書面が、破損または脱落した場合であっても、公示送達の効力には影響はないとされていますが、この場合には、すみやかに破損の箇所を補修して、掲示することとされています(通則通達14条3)。

 

4.公示送達の効力

  公示送達は、その掲示を始めた日から起算して7日を経過する日(掲示を始めた日を含めて8日目)に送達があったものとみなされます(通則法14B)。この期間は不変期間で、その末日が休日であっても延期されません。送達があった日がいつかは、不服申立期間の経過ともからみ納税者の権利救済のために極めて重要な問題ですので、公示送達の場合には知らない間に期限が経過してしまい、その処分を争うことが困難になります。

 

5.設問の回答

 公示送達は、課税庁においても慎重に行わなければなりませんが、貴社の事例の場合に今までご説明したように公示送達の票件を具備しているとすれば、通常送達が有ったものとみなされる日から2ヶ月以内に不服申立てをしなければなりません(通則法77)ので、処分はすでに確定しています。その処分自体を無効にするような重大な瑕疵でもない限り、その処分を覆すことは困難だと思われます。

 

POINT

・公示送達は、その掲示を始めた日を含めて8日目に送達があったものとみなされる

・公示送達の要件である「その送達を受けるべき者の住所及び居所が明らかでない場合」とは、課税庁がおよそ考え得るあらゆる方法による調査を尽くすことまでは要求するものではなく、通常期待し得べき方法によっても住居地が知れない場合を言う