これは、税理2001年10月号79頁(ぎょうせい)に掲載したものです。

 変更がありますので、税理をお読み下さい。

 

 

欠損金処理のための減資                 2001.8.25

                            税理士 中江博行

 

ポイント

1.今年度の商法改正によって、減資を行う場合の取扱いに注意。

2.資本の欠損(会社の純資産額が資本金と法定準備金の合計額に満たない場合)填補のため減資は有効。

3.資本の欠損填補のために法定準備金を取り崩す場合の利益準備金先使用原則が削除された。

4.減資の方法には、株金額を減少させる方法はなくなり、株式数を減少させる方法と単純な資本減少による方法がある。

 

 

 いま、時代は大きな変革期を迎えている。多くの企業では、構造的な不況を克服するために新たな事業展開、事業拠点の整理・合理化、人員の縮小及び合理的配置転換などによって企業体質の改善を図ってきた。しかし、その間に発生した累積欠損が、企業再生の足かせとなっている場合が少なくない。

 このため身軽になって経営の安定化や会社再建を図るために減資を利用する場合が増えている。昨年、2000年度中に、上場会社の8社に1社は、発行済株数を減少させた。これは株式の価値を高めるためあるいは不良資産処理を進める目的などで自社株式を買い入れてそれを償却するなどによっている(注1)。すなわち減資は、不良資産を抱える企業の戦略的スキームの一つとなっている。

 そこで、ここでは減資の概略を示し、実際に欠損金処理としての減資を考えることにする。なお、本稿では、去る6月22日に金庫株の解禁等を定めた「商法等の一部を改正する等の法律」(以下「改正商法」という)の成立をふまえ、その影響を併せて言及する(注2)

 

T.改正商法の概略

 重要な改正の一つは、金庫株の解禁である。これは、金庫株、すなわち自己株式の取得、保有にに関する規制の緩和と自己株式を処分する規定の新設が行われた。従来、自己株式の取得は原則禁止されていた(旧商法210条)が、改正商法では、原則として定時総会の決議により配当可能利益の範囲内で、任意(目的は問われない)に自己株式を買い受けることを認めた。自己株式の処分についても、従来、消却目的の場合は遅滞なく失効手続をとることが求められ、それ以外の場合でも相当の時期に処分することが規定されていたが、改正商法においては、金庫株と言われる所以である保有期間の制限が廃止された。このような金庫株の解禁を急いだ理由は、株式相互持ち合いの解消により、供給過剰になった株式を取得することによって株価対策に用いたいとする産業界からの要求があったとされている(注3)。実体は変わらずに株価を上げるとする姑息な対策と言う感はあるが、実務的には選択肢が広がることとなり興味深い。

 なお、自己株式の保有期間の制限がなくなったことから、会計処理も、従来、貸借対照表の資産の部に計上されていたものが、改正後は資本の部に控除項目として計上されることになるものと思われる(注4)

 もう一つの改正は、額面株式の廃止で、株券発行単位の自由な選択が認められた。従来は、会社設立時の株式の最低発行単位を5万円とし(旧商法166条2項)、株式分割後の1株当たりの純資産額が5万円未満となる株式分割が禁止されていたが、改正により会社は株式発行コストなどを考慮し発行価額を自由に決められることとなった。

 なお、額面株式の制度が廃止されることになったが、従前の額面株券は、改正法施行後でも株券などに額面に関する記載があったとしても、その記載は無益的記載事項となるだけで、その株券が無効になることはないとされ、株券を回収するなどの特段の手続は不要とされている(注5)

 そして、減資スキームに大きな影響を及ぼす改正に、法定準備金制度の改正がある。

従来は、利益準備金として、株式会社、有限会社の毎決算期における利益処分として支出する金額の10分の1以上を、株式会社においては、中間配当の金額の10分の1を積み立てるとされていた(旧商法288条)。改正法では、利益準備金は資本準備金とあわせて資本の4分の1に達するまで積み立てれば足りるとした。また、従来は、法定準備金の使途を資本欠損の填補や資本組み入れなどに限定し(商法289条@)、資本填補の場合には資本準備金より先に利益準備金を取り崩すべきこととされていた(旧同法同条A)。改正法では、法定準備金のうち資本の4分の1を超える部分の金額については、使途の制約を撤廃すると共に、欠損填補のために利益準備金、資本準備金のどちらを先に取り崩しても構わないとされた。

 なお、資本準備金の積立を規定した商法288条ノ2第1項第4号が削除され、資本の減少により減少した資本の額が株式の消却又は払戻しに要した金額あるいは欠損填補に充てた額を超える場合であっても、その超過額である減資差益について資本準備金としないこととされた。すなわち資本準備金ではなく配当原資とされたのである。

 

U 減資の目的と会社戦略

1.減資の目的

 減資(資本の減少)とは,会社の資本金の額を減少させることをいう。

 減資の目的の一つは、営業の一部譲渡や事業規模の縮小等の実施により過剰資本となった会社が,会社財産を株主に返還するために行われる。実際に会社財産の減少をきたすことから実質的減資といい、経営不振の会社では、一層の財政状態を悪化させるため実務ではあまり行われない。

 もう一つの目的に、損失を計上した会社が現在の資本のままでは利益配当を行える見込みがないときに、会社財産の払戻しはせず,単に帳簿上の資本金額を減少させることで欠損の填補を図るために用いられる。これによって将来の利益配当を可能にする(注6)。これを形式的減資といい、法律上資本が減少しても、実質上これに当たる会社財産を株主に払い戻さないで減資をすることから、会社財産の欠損時に用いられ、通常減資では形式的減資が利用されている。実際には、形式的減資を図ると共に新株を発行して必要な資金を調達して会社の再建を図る場合が少なくない(注7)

 このほか、会社の合併に際し、当事会社間の財産状態を同一にし、合併を容易にするために減資が行われることもある。

 

2.減資の方法

 従来の額面株式の場合の減資の方法としては、株(額面)金額を減少させる方法、発行済株式総数を減少させる方法や、両者を併用する方法があった。

 今後は無額面株式のみとなることから、減資の方法として、株金額のない無額面株式のみになったことから株金額の減少はありえない。すなわち無額面株式における減資の方法としては、(1)株式数を減少させる方法と(2)単純な資本減少による方法とになった。

(1)株式数を減少させる方法

 この方法は減資方法として最も多く使用され、特定の株式を消却させる方法と数個の株式を併合して株数を減少させる方法とがある。

 消却には、株主の意思に関係なく無差別の抽選などによって行う強制消却と、株主との同意を得て特定の株式を譲り受け、消却する任意消却の方法がある。なお、株式の消却には強制消却と任意消却の区別のほか、株主に対価が供せられる有償消却と対価が供されない無償消却の区別がある。

 株式の併合とは、例えば二株の株式を一株にして株式数の減少を図る方法で、全株式に一律に行われる点で公平であり、名義上の減資に適しているが、端数株式を生ずることが多い。        

(2)単純な資本減少による方法

 無額面株式の場合には、資本額のみの減少は当然可能である。もっとも1株当たりの株価を上げようとするならば、株式消却あるいは株式併合によって株式数を減少させる必要はある。

 いずれの減資の方法も株主に不当な不利益を生じないように株主平等の原則を遵守してこれを行わなければならない。

3.減資の手続き

 商法は、減資をする場合に、株主の利益に重大な影響を及ぼすことから株主総会の特別決議を要し(商法375条、343条)、債権者保護の立場から、公告、個別の催告により債権者に異議を促し、異議があれば弁済、相当の財産信託等による(商法376条、100条)ことを求めている。(なお、商法改正の中間試案

第27では、資本減少手続の合理化が予定されている。)

4.減資を用いた会社戦略

 不況の長期化を反映し、減資を用いた会社再建策を実施する企業は少なくない。

 最近の実例では、今年5月に、ゼネコン大手の長谷工コーポレーションは、自力再建を進める上で「バランスシートをすっきりさせ、経営の安定性を高める」狙いから、減資に踏みきること発表した。資本準備金175億円を取り崩すとともに590億円の無償減資を行い単体の累積損失610億円を一掃するとしている(注8)

 また、宮崎市の大型リゾート施設「シーガイア」の再建計画では、会社更生手続きを進めるグループ3社のうち、運営会社のフェニックスリゾートが100%減資を実施後、支援会社の米投資会社リップルウッド・ホールディングスの出資で第三者割当増資を行う方向で検討を進めている(注9)

 このように、減資は会社再建戦略において重要なスキームとなっている。大会社に限らず、中小会社においても、最低資本金枠の範囲内であれば減資により、あるいは減資、増資により経営基盤の改善を図る手法として有効である。本年度の商法改正によって減資によるスキームの可能性が広がるのではないかと思われる。

 

V 欠損金処理のための減資スキーム

 具体的事例について検討する。









 

事例1
 資本金1億円のA社は、欠損金4千万円があり、この欠損を補てんするため2株を1株に無償併合し、5千万円の減資を行った。なお、減資前 のA社の貸借対照表は次の通りであった。この場合の会計処理及び税務上の取扱いはどうなるか。
       A社減資前貸借対照表(単位:千円)    
       諸資産 80,000
      
欠損金 40,000 
諸負債  20,000    
資本金 100,000         
 

 この事例の場合に、減資が実行されると

 A社の仕訳は次のようになる。(単位:千円)

  (借)資本金   50,000 (貸)欠損金   40,000

             (貸)剰余金 10,000*

*従来は減資差益として資本積立金として計上されていたが、配当原資となるその他の剰余金と同様に処理されると思われる(注10)

         A社減資後貸借対照表 (単位:千円)      

        諸資産 80,000 
                
 
諸負債   20,000
資本金   50,000
剰余金   10,000

 この場合A社は、配当原資となる剰余金が発生しているため「みなし配当」にかかる課税関係が発生するかどうかが問題となるが、留保利益(利益積立金等)が株主に帰属するわけではないことから、課税関係は生じないと考えられる。

 また、その後に剰余金を処分した時には、配当課税が発生するであろか。しかし、実質は払込資本の返還に変わらないことから、そこで課税するのも適当とは思われない。

 










 

事例2
 資本金3千万円のB社は、欠損金5千万円を補てんをするため、減資をしたいと考えている。減資前 のB社の貸借対照表は次の通りである。この時の会計処理及び税務上の取扱いはどうなるか。
       B社減資前貸借対照表 (単位:千円) 
       諸資産 50,000
       欠損金 50,000
  
諸負債  40,000    
資本金  30,000         
資本積立金30,000    
 

  この事例の場合、欠損金の5千万円を処分するためには、

  (借)資本金   20,000    /(貸)欠損金   50,000    (単位千円)

  (借)資本積立金 30,000    /

  として処理することになる。

  この場合には、減資後の貸借対照表は次のようになる。

          B社減資後貸借対照表 (単位:千円)      

        諸資産 50,000 
               
諸負債   40,000
資本金   10,000

 この場合にもB社に課税は生じないが、B社の法人株主に対しては、減資後の保有株式の評価損の計上が可能かどうかが問題となる。

 法人税法施行令第68条二号ロでは、非上場の有価証券について、その有価証券を発行する法人の資産状態が著しく悪化したため、その価額が著しく低下した場合に評価損の計上を認めている。

 この「資産状態の著しい悪化」としては、会社が更正・清算手続き等が開始される場合以外では、事業年度終了の日におけるその株式を発行した法人の1株当たりの純資産価額が当該株式を取得した時の1株当たりの純資産価額に比しておおむね50%以上下回ることとされている(法基通9-1-9)。

 また、「有価証券の価額が著しく低下したこと」とは、その株式の期末時価が期末簿価のおおむね50%相当額を下回ることとなり、かつ、近い将来その価額の回復が見込まれない場合とされている(法基通9-1-7、9-1-11)。

 これらをもとに評価損の計上の可否を検討することになるが、B社の株主が親会社など「企業支配株式」に該当する場合には、「期末時価」は株式の通常の価額に企業支配に係る対価の額(プレミアム)を加算した金額となる(法基通9-1-15)ことから、評価損の計上が認められないことが少なくない。

 

おわりに

 多くの大企業が不況の長期化により欠損を抱え、企業再編の道を探っている。中小企業とて例外ではなく、実務では、老舗の会社が合併、清算などによって閉鎖を進めている場合が少なくないが、中小企業も大企業と同様に再生を図るための減資も企業戦略の一つとして有効である。

 また、中小企業においては、株主の死亡、退職による会社株式の買い取りを求められることも多い。この場合に買い取り先を探す方法ばかりでなく、自己株式(金庫株)の取得も利用すべきである。その後、消却、あるいは従業員への売却などによる企業体質の強化スキームに利用することができる。

 平成13年10月に施行される商法改正によって、株券や法定準備金の扱いが従来とは大きく異なり、企業戦略や税務など実務的に大きな影響を及ぼしている。本稿で取り上げた減資も、商法改正の影響を大きく受けることになった。まだ施行前で、税務上の取り扱いが明らかになっているわけではないが、今後通達等で明らかにされると思われる。企業基盤の改善に減資のスキームは今後とも利用されることになろうが、そのためにも税制上の対応の変化にも注視しておく必要があろう。

 ここ数年、商法はめまぐるしく改正され、本年は企業再編税制がこれに対応した。これからも税制は相当な改正が余儀なくされるであろうが、実務で混乱しないような対応を期待したい。課税は一度で完結しない場合が多い。株式に対する課税についても、取得時、保有時や譲渡時など長期間課税の影響を受けるため、明確で整合性のとれた税制が必要とされる。

 

 


(注1) 日本経済新聞2001年8月16日

(注2) 「商法等の一部を改正する等の法律」(平成13年衆法第62号)は、「商法等の一部を改正する等の法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律」と共に議員立法として提案され6月29日に交付され、本年10月1日の施行が予定されている。これは、証券市場の活性化対策ないし緊急経済対策として、商法改正の検討項目のうち一部を先取りして取り上げられた。なお、改正法施行に伴って株式消却特例法(平成9年5月法律第55号)が廃止される。

(注3) 野村教授は、「規制の緩和は、経営者の裁量の余地を広げると同時に、その責任を重くする。金庫株の解禁が、あたかも即効性のある治療薬であるかのごとく誤解して、経営者が市場に不公正な取引を蔓延させるようなことがあれば、後世の学者は今回の改正を愚作と評するに違いない。そうならないためには、市場の健全性を維持することこそが最も重要な株価対策であることを、再認識しておかなければならない。」と述べている。(野村修也「金庫株の解禁」ジュリスト1206号101頁)

(注4) 法務省は、平成13年7月30日に「平成13年6月商法改正に伴う『株式会社の貸借対照表,損益計算書,営業報告書及び附属明細書に関する規則』の改正に関する意見募集」を行い、改正案を示している。同規則第34条C改正案「自己株式は,第一項の規定にかかわらず,資本の部に別に自己株式の部を設けて控除する形式で記載しなければならない。」

(注5) 平成13年6月8日衆議院法務委員会第 16 号議事録

「○上田勇委員 次に、今度の法案では株式の額面が廃止されております。株式の額面というのはほとんど現状において経済的な意味合いがなくなっているという意味で、それをすべて無額面にするということは、その趣旨はよくわかりますけれども、ただ一方、既に発行されている株式というのは額面のものもございますけれども、この既に発行されている額面株式というのはどのような取り扱いにされるんでしょうか。

○根本匠議員 これまで発行されていた額面株式、例えば株券や定款に五十円などの一枚の金額、これが記載されております。今回の改正によりまして、額面株式の制度が廃止される。廃止されることになりますと、これらの記載、これは株券などの効力には何の影響も与えない無意味な記載になります。したがいまして、改正法施行後におきましては、株券などに額面に関する記載があったとしても、実はその記載は何の意味も持ちませんので、その株券が無効になることはなく、株券を回収するなどの特段の手続も不要になる、こういうことでございます。」

(注6) 鈴木竹雄『新版会社法全訂第五版』291頁

(注7) 資本を100%減資し、同時に増資することが許されるかについては、会社更生手続による場合には可能であるが、会社更生手続以外では意見が分かれている。大隅健一郎、今井宏『新版会社法論 中U』522頁。門野坂修一商事法務1274号52頁(1992年)

(注8) 日本経済新聞2001年5月29日

(注9) 日本経済新聞2001年5月27日

(注10) 資本準備金として積立を規定した「商法第288条の2 四 資本の減少に依り減少したる資本の額が株式の消却又は払戻に要したる金額及欠損の填補に充てたる金額を超ゆるときは其の超過額 」は改正商法において削除された。