パチンコ「平和」事件の判決を読んで
岩下忠吾先生の研究会で発表したものです。 発表日平成9年6月8日

1、はじめに−発表の目的−

パチンコ「平和」事件の経緯と東京地方裁判所判決についての概略の紹介
所得税法36条の”収入すべき金額”とはなにか?
所得税法157条の同族会社行為計算否認規定とは何か?

ここでは無利息貸付に係る問題について取り上げることとする。

2、発表事例

東京地裁平成9年4月25日、平成7年(行ウ)27号(未登載)

1、事実の概要

原告Xはパチンコ機器製造業を営む株式会社平和(以下H社という)の代表取締役であり、また、有価証券の保有、運用等を事業目的とした有限会社中島興産(以下N社という)の取締役でもあった。XはN社に対して,同社がH社の株式をXから購入する資金を無期限・無利息で貸し付けた。これに対して被告Y(桐生税務署長)は、この無利息貸付けについて所得税法157条(同族会社等の行為又は計算の否認、以下「否認規定」という。)を適用し、利息相当分の雑所得があるものとして所得税の更正処分を行った。

この事件を時系列的に整理してみる。なお金額、株数については端数を省略し ている。
昭和35年9月 H社が設立された。
昭和63年08月08日 H社は店頭登録銘柄とされた。63年12月末現在、XはH社の73.5%の株式(4325万株)を保有
昭和63年11月29日 N社が設立された。63年12月末現在、XはN社の98%の出資持分(490万円)を保有
平成01年03月10日 XはN社に対して今世間を騒がせている野村証券等を介し てH社株式3,000万株を代金総額3,450億円で譲渡した。
平成01年03月15日 @Xは東海銀行原宿支店他三行から3,455億円を借入れた(借入利率3.375%)。
   AXはN社に3,455億円を無担保、無利息で期限を定めずに貸付けた。
   BN社は各証券会社に対して株式の購入代金として3,450億 円と株式購入手数料5億円を支払った。
   CXは、各証券会社から、H社株式の売却代金3,450億円か ら手数料5億円及び有価証券取引税19億円を控除した3,425億円を受け取った。
   DXは、前記銀行に借入金3,455億円と一日分の利息千万円を返済した。
平成02年03月14日 Xは平成元年分所得税の確定申告書に前記株式譲渡利益は非課税となるところから0円、不動産所得1,400万円、配当所得を8億円、給与所得2億円による総所得金額10億円、納付すべき税額2億円としてYに提出した。
平成03年12月06日 H社は東京証券取引所第二部に上場された。
平成04年06月18日 Yは前記借入金について否認規定を適用して利息を認定して、雑所得の金額を141億円として計算した上、総所得金額151億円、納付すべき税額73億円、過少申告加算税10億円とした更正、賦課決定処分をした。なお、平成2年分、平成3年分についても否認規定を適用 し同様の処分を行っている
平成04年07月13日 Xは異議申立を行う。
平成04年08月11日 N社は解散し、10月15日に精算結了した。
平成04年10月09日 YはXの異議申立を棄却する。
平成04年11月06日 Xは国税不服審判所長に対して審査請求を行う。
平成04年12月11日 N社所有のH社株式の市場価額が下落していたため、XはN社の解散に伴い1,400億円の貸倒損が発生した。Xは所得税法64条(資産の譲渡代金が回収不能となった 場合等の所得計算の特例)の規定により,Yの認定した利 息はなかったものとみなされるとして、所得税法152条 (更正の請求の特則)により更正の請求を行った。
平成05年04月12日 Yは更正の請求を却下した。
平成05年04月26日 Xは異議申立を行う。以降審査請求とみなされ併合して審理が行われた。
平成06年11月09日 裁決。
平成07年02月09日 東京地方裁判所に提訴
平成09年04月25日 東京地方裁判所による判決

2,主なる争点
@否認規定は収入の発生を擬制する規定と解して良いか?また、否認規定の要件 は同族会社の行為または計算が前提となるか?
A本件無利息貸付が本件否認規定の適用対象となり得るか?
B認定利息の利率は市中金利相当か?
C個人が法人に無利息で貸付をしても課税関係は生じないと税務実務及び公的見解が存在していたのであるから、それに課税することは信義則に違反しないか?

3、処分及び判示
(1)異議棄却理由

XのN社に対する貸付金は、純経済人の行為として極めて不合理、不自然であり、同族会社であるから無利息の貸付という行為計算を行い得た。よってこの様な行為計算を容認した場合にXの雑所得の金額を減少させ、所得税の負担を不当に減少させる結果となるのは明らかである。
(2)審判所の判断
棄却する裁決をする。筆者の知る限り公表されていない。
(3)裁判所の判断
@否認規定は収入の発生を擬制する規定と解して良いか?また、否認規定の要件 は同族会社の行為または計算が前提となるか?
 これについて判決は次のように言う(下線筆者)。
 「しかし、本件規定は、同族会社の行為又は計算の実体法的効力を否定するものではないから、同族会社の行為又は計算によつて株主等に収入が発生せず、又は経費か発生していること等を前程にして、株主等の所得税の計算という場面において、通常の取引で認められる収入の発生又は経費の不発生等を擬制するものである。」として所得の発生を擬製する規定だとしている。少し長くなるがそれ以下の裁判所の判断を示す。
「また、同族会社が正当な対価を負担することなく株主等の支配する財産、経済的価値の移転を受けることは、その財産、経済的価値が同族会社の利益発生の直接的な原因とはなつていない場合てあつても、株主等の収入ひいては所得税の発生を抑制することとなり、株主等の所得税の負担を減少させる結果となる同族会社の行為ということができるから、株主等の所得税の負担減少の有無を検討するにつき原告の主張する外部からの経済的価値の流入と目される事実を要するものではないといふべきてある。すなわち、株主等がその有する財貨を無償若しくは低廉な対価で、又は不相当に高額の委託料を支払って同族会社に貸与又は管理委託をし、同族会社においてこれを転貸又は管理して通常の対価を取得する場合には、外部からの経済的価値の流入が想定され、株主等の所得が同族会社の介在により分散されることになるが、この場合の外部からの経済的価値の流入を株主等の所得と観念することは、結局、同族会社への収入を株主等に対する収入と同視し、いわば本件規定を同族会社の法人格を否認する規定と解するに等しく、「同族会社の行為又は計算」を否認対象とする本件規定の文言と著しく乖離する結果となるから、このように観念し得ないことも明らかである。また、株主等から不動産の無償貸与を受け、これを事業の用に供する等、株主等から移転を受けた財貨を同族会社が事業に利用する場合でも、当該財貨を直接の原因とする外部からの経済的価値の流入はないものの、当該財貨の通常の利用によつて私人が取得すべき収入の発生は抑制され、他方で営利法人である会社は利用し得る財貨を合理的に運用することが期待されるから、結局、株主等から移転を受けた財貨は同族会社による利益の原因となり、株主等の得べかりし所得を減少させる結果となるのであつて、右事例を転貸等の場合と区別する理由はない。
 そして、同族会社の行為又は計算によつて株主等がその喪失した所得に代わる経済的成果を実現させたことも、本件規定の要件とはならないものというべきである。けだし、右にみたとおり、本件規定は、株主等から同族会社への経済的利益の移転を対象とするものであつて、同族会社から株主等へのそれを対象とするものではないからである。また、株主等の所得税を減少させる結果となる同族会社の行為又は計算は、株主等にとつては経済的価値の流出という経済的に不利益な行為ということになるが、同族会社を支配する株主等がこのような不利益な行為を選択、実行したことには、かかる経済的不利益に優越する理由があったというべきところ、その理由が右不利益を補って余りある具体的経済的利益である場合には社会通念上相当と解される前記特段の事情が認められないために本件規定が適用されることになるが、これは不当性に関する判断の問題であつて、株主等の具件的経済的利益の発生が本件規定の要件となるものではないのである。また、本件規定の恣意的運用が許されないことは当然であるとしても、原告のいう「所得に代わる経済的成果」の存否という要件が、独立かつ対等で相互に特殊関係のない当事者間で通常行われている取引という要件と比べて特に明確であるということもできないから、原告の主張するような要件を本件規定の適用要件として加重する理由もみいだしがたい。よつて、原告の右主張は採用することができない。
 次に、本件規定による否認の対象は同族会社の行為又は計算であるが、これによつて株主等の所得税の負担を減少させる結果となるものであつて、否認の目的が株主等の所得税を正常な行為又は計算に引き直すことにあることからすれば、否認されるべき同族会社の行為又は計算とは、同族会社を当事者とする株主等の所得計算上のそれであることは明らかである。
中略

 本件規定となつたという沿革、及び既に説示したような本件規定の趣旨に照らせば、本件規定にいう同族会社の行為又は計算とは、同族会社と株主等との間の取引行為を全体として指しその両者間の取引行為が客観的にて経済的合理性を有しているか否かという見地からその適用の有無及び効果を判断すべきものというべきである。
 これに対し、原告は、本件規定の適用対象を株主等と同族会社との間の取引行為全体とすることは本件規定の文言からかけ離れた解釈であると主張するが、株主等の単独行為(同族会社に対する債権の免除等)であれば格別、株主等と同族会社との間の取引行為すら本件規定の対象とならないのであれば、本件規定の適用場面は想定しがたく、本件規定の趣旨である税負担の企平がおよそ達成し得なくなるし、本件規定の文言上も前記説示のように解し得るものというべきであるから、原告の右主張を採用することはできない。
 そして、本件規定は、同族会社の行為又は計算の結果としての所得税の減少について不当性を必要としているのであつて、私人たる株主等の行為の合理性でないことは原告の指摘するとおりと解されるが、右の不当性は、同族会社の行為又は計算の不当性でもなければ、株主等の租税回避の不当性でもないのである。確かに、本件規定は、その制定の沿革からすれば、同族会社という法形式を利用して実質的な租税負担を軽減しようとする居住者に対処することを目的とした規定であるということはできる。しかし、「所得税の負担を不当に減少させる結果となる」という本件規定の文言から、本件規定の適用対象が客観的な租税回避行為に限られるとまで解すべき理由はない。また、我が国の税法は諸外国の立法例にみられるような租税回避行為に対処する旨の包括的規定を持たず、ただ一般に租税回避が生じやすいものと認められる行為類型に対処するために所得税法33条一項かっこ書等の個別的な否認規定を置くこととしたのであり、その中で同族会社等の行為又は計算による前記のような課税上の弊害に対処すべく、やや適用範囲の広い否認規定として本件規定が位置づけられているにすぎないのである。よつて、本件規定を初めとする各個別的否認規定の適用対象は、講学上の租税回避行為であることが通常であるとはいえても、これに限られると解する必要はないものというべきである。」

A本件無利息貸付が本件否認規定の適用対象となり得るか?
 「ある個人と独立かつ対等で相互に特殊関係のない法人との間で、当該個人が当該法人に金銭を貸し付ける旨の消費貸借契約がされた場合において、右取引行為が無利息で行われることは、原則として通常人として経済的合理性を欠くものといわざるを得ない。」として、これに続けて
 「したがって、株主等が同族会社に無利息で金銭を貸し付けた場合には、その金額、期間等の融資条件が同族会社に対する経営責任若しくは経営努力又は社会通念上許容される好意的援助と評価できる範囲に止まり、あるいは当該法人が倒産すれば当族株主等が多額の貸し倒れや信用の失墜により多額の損失を被るから、無利息貸付けに合理性があると推認できる等の特段の事情がない限り、当該無利息消費貸借は本件規定の適用対象になるものというべきである。
 これに対し、原告は、無利息消費貸借が一般的に経済的合理性を欠くとすれば、本件規定を株主等が同族会社に貸付けを行った場合にのみ適用するのはむしろ不平等である旨主張する。しかし、所得税法は居住者に対し経済的合理性ある行動を一般的に要求しているわけではなく、本件規定は、同族会社においては通常と異なる法形式を利用して株主等の租税負担を軽減することが行われやすいことから、かかる事態に対処する目的で特に設けられたものであることは既に説示したとおりであって、原告の主張は結局本件規定自体の平等原則違反をいうことに帰するところ、本件規定の前記のような趣旨、目的には合理性があるものというべきであるから(東京地裁昭和44年(行ウ)第180号、同51年7月20日民事第三部判決・税務訴訟資料89号307頁参照)、原告の右主張は採用することができない。」
           長くなったが、未だ公表されてないので記載した。

B認定利息の利率は市中金利相当か?
 判決は言う・・「通常の経済人である個人が特殊関係のない法人に金員を貸し付けるに当たり、当該法人が金融機関から当該金員を借り入れる際に必要な利率と同額の利率を付することは経済的合理性が認められるから、結局において、銀行の貸出平均金利を基礎として原告の雑所得を計算することは合理性が認められるというべきである。」

C個人が法人に無利息で貸付をしても課税関係は生じないと税務実務及び公的
 見解が存在していたのであるから、それに課税することは信義則に違反しないか?
 証拠を示して判決は次のように言っている。「各文献は、税務官庁の担当者の手になるものであり、かつ、個人から法人への無利息貸付は一般に課税対象とはならない旨の記述がみられるものであるが、いずれも通常想定される一般的な税務事例に則した解説書の性質を有する私的な著作物というほかなく、右にいう公的見解の表示と同視することはできないし、右いずれの記述をみても、当該無利息貸付が経済的にみて不自然、不合理と認められるような場合を含めて常に本件規定の適用がないと述べているものとは解されない。」

3、研究

1,所得税法36条の”収入すべき金額”
 所得税法36条では、「その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額」と規定しているが、この収入金額については、何ら明文の規定は置かれていないが、一般には「外部からの経済的価値の流入」と解されている(DHC「コンメンタール所得税法」3135頁)。すなわち、評価益や未実現利益はこれにはあたらない。もちろん消極的な経済価値の減少(債務免除等)についても収入の一形態とはなるが、所得税法における収入は、法人税法のように資産の無償譲渡や役務の無償提供を収入とすることはできず(法人税法では”収益”としている)、棚卸資産等の自家消費等(所法39,40、41など)を「別段の定め」として収入金額に算入している。
 このため本件の場合のような個人から法人に対する無利息貸付について利息を認定して収入金額とはならないと解される。

2,所得税法157条の同族会社行為計算否認規定について
(1)同族会社の行為・計算の否認規定の税負担の不当な減少については、非同族会社では通常なしえないような行為・計算を指すとするものと純経済人の行為として不合理・不自然な行為・計算を指すものとがあるが、通常は後者によるとしている(金子弘『租税法第六版』296頁)。本事例を当てはめると、前者は、無利息貸付を受けることは通常なしえないとまでいえないと思われる。同族会社であるからなしえたとは言えないからである。後者については個人は法人と同じレベルで純経済人とみることができるかという問題は残る。なぜなら個人の場合には経済的行為を主体として常に行動している訳ではないからである。
(2)「同族会社の行為・計算」は、同族会社が行う行為に限定されるのかあるいは同族会社と関わりのある行為と解すべきであるかについては、本事例では、「否認されるべき同族会社の行為又は計算とは、同族会社を当事者株主等の所得計算上のそれであることは明らかである。」として後者をとっている。一方被相続人が死亡直前に同族会社に対する債権を放棄した事例で相続税法64条の行為・計算の適用で争われた事件(最高裁 昭和62年5月28日判決、税資158号623頁)では、相続税法同族会社の行為・計算の否認規定について法が税務署長に認めている否認の対象は、あくまでも「同族会社の行為又は計算」であり、その他の第三者の行為まで否認しうるものではないとしている。これについて国税庁の渡邊定義氏は、「確かに判決が述べるように「同族会社と関わりのある行為」というような拡張的解釈は許されないとしても、会社の役員あるいはこれを支配する株主等の行為で、同族会社と密接不離の関係からみて、同族会社の行為と同視することができる場合のすべてが一般論として否認されたものではないと解すべきであろう。」としている(税務事例26巻8号12頁)。これは賛成する。
(3)本判決は、収入のないところににも、本件否認規定をつかい収入の擬制ができるとしている。いわんとしているところを要約すると、・・・株主等の収入計算では、通常の取引では認められる収入や費用の発生をさせることができるし、その個人に外部からの経済的な価値が実際に存在しなくてもかまはない。しかし、その個人の行為によって個人の利益を法人に付け替えることを否認するとすれば、これは法人格否認となるがこれを認めるものではない。しかしそうだと言っても同族会社が株主等から不動産を無償で借り受けてこれを会社が他に貸し付けた場合には、個人に直接の経済的価値の増加はないが、個人が直接他に貸した場合の収入が減じることになるのであって、結局は株主等から無償で借り受けた不動産による利益は同族会社の利益となって、貸した株主の所得を減少させることになる。・・としている。
 このことは、税法上で収入とはならない場合であっても同族会社との取引となれば、対同族会社の時だけに否認規定を適用でき新たに収入を認めることができるとしている。これほどの拡大解釈を租税法律主義を取る我が国で取り得ると解釈する裁判所があるという驚きを禁じ得ない。不当のハードルはあるとしても同族会社の株主等が行えば、あらゆる面で収入発生を擬制することができることになり、株主が無償で取締役業務を行えば、それが不当と判断されれば、収入が擬制される。個人の所有する車両を会社に無償で貸し付けてそれが不当と判断されれば又所得が擬制される。確かにこの事例の場合は、金額が高額であり通常余り想定し得ない事例かも知れないが、たとえそうであったとしても新たに所得税の収入理論を行為・計算否認規定のみで収入を発生させ得ると考えることはできない。裁判所の判断の多くは合理的であるが、この点に関しては立法上の対応を待つべきで、拡大解釈で基本原理ともなる収入(所得)概念を新たに創設すべきではない。

4,おわりに
 地裁判決文を見て 課税庁であるYの主張の中でいくつかの興味深い点が見られる。最後にそれを見ておくことにする。それは次の主張である。
 「原告は、本件譲譲渡の当時68歳であつたから、本件譲渡は、将来発生するであろう相続開始時における平和株の散逸防止、円滑な事業示継及び相続税対策をも意図していた。」
「平成元年四月一日以降において、原告が中島興産から本件株式の一部又は全部を再取得した後、その一部又は全部を他に再譲渡すれば、その譲渡益を圧縮又は零にすることができる。
 したがって、本件消費貸借を容認した場合には、原告の所得税の負担を不当に減少させる結果となることは明らかであるから、被告桐生税務署長は、本件規定を適用し、原告と中島興産との間において独立当事者間で行われるような有利息消費貸借が行われ、通常の期間内に利息相当額の授受があつたものとして本件認定利息を算出し、本件各年分の雑所得の額を計算したものである。」
 これは、課税庁の本音がかいまみえるのであるが、所得税の否認規定を使ってはいるが、相続税の負担の減少の不快感を現している。
 後段は、本件株式の売買が昭和63年の改正法律の施行前の駆け込み譲渡で、施行後であれば有価証券の譲渡益課税があったのに数日前であるので課税できなかった悔しさが現れている。しかしたとえ1日前であろうと法律は厳格に適用されなければならないのであって、そのために税額が減少したからと言ってそれを理由とすることはできない。法の信頼を失わせるという意味で残念な課税であった。

追加
  研究会参加者の主な意見をあげてみます。
*同族会社の役員が、無利息で会社に資金を融資すること自体は、個人の行う行為で合理性がないとまで言えない。
*個人には、純経済人のとして合理性を追求できない。
*役員の土地を会社に貸して建物を建設させる行為は問題になるのではないか。
*この判決も仕方がない。でも数千万円の貸付ならば問題にならないのではないか。(理論的な説明はありませんでした。)
*無利息貸付自体がおかしい。課税すべきだ。(少数意見です。相当これに対しては批判意見が出されました。)
*発表者への質問
  同族会社以外でも問題となるか。
  個人対個人(親子間)の無利息による貸付についてはどうか。

参考文献
 土屋晴行「パチンコ平和事件」税理39巻16号37頁
 松沢智「個人の無利息貸付と同族会社の行為計算否認規定」税務弘報41巻12号 112頁
 北野弘久「同族会社行為・計算の否認と租税要件明確の原則」税理36巻5号74頁、 他に同号に同事件の特集がある。


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Last Updated: 11/JUN./1997