これは、税理2000年1月号145頁(ぎょうせい)に掲載したものです。この問題は、未払い決算賞与についてですが、労働法から見れば問題の多いところですが、実務的にはトラブルの少なくないところだろうと思っています。これは本文にも書きましたが、未払賞与は、賞与引当金の替わりに使われる恐れがあり、そのためにある程度明確にしようとして立法化したのではないかと思われますが、決して明確になったわけではなく、実務的には今後問題が発生するかも知れません。
 なお、このテーマは立法が新しく、あまり掲載されているものも多くないと思われます。私なりに独自の見解を入れており、納得できない方も少なくないかも知れません。特に二号の一ヶ月以内の支払については、文言どうりに解すれば、この形式を充足すれば全てOKとなると思われますが、ここでは少し疑問点を述べてみました。要約すると未払賞与の労働法から見たとき果たして賞与支払請求権が発生しているのかということと、そこから派生して未払いになった理由は、無くても良いわけではないのではないかということです。
 批判も多いと思いますが、労働法における側面から見たときにちゃんとしているのかが問題であると思っています。被使用者が一ヶ月未満で退職したり、不慮の事由などで支払い請求を受ければ支払う義務が発生することなどを満たしているのかが問題になるのではないでしょうか。どうぞ、雑誌の本文をご覧ください。 
 

未払い決算賞与をめぐる税務とその問題点
   −法人税法施行令第134条の2の適用にあたって−
                           99.11.25
                          税理士 中江博行
 
  平成10年の税制改正によって、使用人賞与の損金算入時期として法人税法施行令第134条の2が新たに制定された(政令105号)。これは、支給日前に未払賞与として損金算入ができるかどうかのルールを定めて、法でその取扱を明らかにしたものであるが、実際の適用場面では、必ずしも明確、一様に解釈できるものとは限らないことから、ここで、適用上の問題点を検討する。
 
1.賞与の意義
 まず本条を検討する前に、ここでは法人が支給する賞与について見ておく。
 この一般に用いられている賞与については商事法上では特に規定されてはいないが、法人税法上では、法第35条第4項(役員賞与等の損金不算入)に規定があり、同項では、賞与とは、「役員又は使用人に対する臨時的な給与(債務の免除による利益その他の経済的な利益を含む。)のうち、他に定期の給与を受けていない者に対し継続して毎年所定の時期に定額(利益に一定の割合を乗ずる方法により算定されることになっているものを除く。)を支給する旨の定めに基づいて支給されるもの及び退職給与以外のものをいう。」とされている。
 また、労働基準法では、労働の対償として使用者が労働者に支払うものを“賃金”と定義し、賃金、給料、手当、賞与その他名称を問わないとして、賞与もこの中に含まれる(労基11条)。労働基準法において賞与についての定義はおいていないが、同法第24条2項において「臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもの」及び同法第89条4号において「臨時の賃金等(退職手当を除く)」と規定している。もちろん臨時に支払われる賞与といっても、賃金であるには変わりないことから、その支払方法に当たっては、強制通用力のある貨幣で支払うことを要求する通貨払の原則、直接労働者(使者を含む)に支払うことを要求する直接払の原則や賃金の一部の支払留保を認めない全額払の原則などが要求される。
 賞与は、ほとんどの企業や役所において盆・暮れに通称ボーナスとして従業員に支給され、今日では、一般化、恒常化され通常の賃金を補足する給与形態の一部として従業員の賃金収入の基本的部分をなしている。賞与額の算定に当たっては、従業員の査定対象期間における業務成績や企業貢献度などを加味して支給額が決定されている。そこで賞与の法的性質については、通説、判例とも、労働協約、就業規則、労働契約もしくは労働慣行によってその支給条件が明確になっていて、“労働の対償”としての性格を有するものは、賃金に該当すると考えられている。すなわち、労働実務においては賞与も通常賃金の一部と考えられている。
 労働法上における賞与に関する法解釈論として、支給日不在籍者に対する賞与不支給に対し、賞与請求権が認められるかどうかの論争がある。学説は、支給日在籍者のみ賞与を支給する規定は、労働協約、就業規則等で明確な場合は支給日不在籍者の賞与請求権は発生しないとすることに合理性があるという説(最高判昭和57年10月7日、判例時報1061号118頁がある。)と賞与は後払いの賃金と解されるから、支給日以前に退職したり、解雇された場合でも、当該賞与の支給対象期間内に在籍していれば、その在籍期間に対応する額の賞与は当然請求権が発生する説とに分かれている。通説は前者を採り、支給日在籍者に賞与請求権が発生すると解されている。
 
2.税法における賞与
2−1 賞与に対する課税
(1)立法構造
  賞与に対する法人税法上の取り扱いは、法人税法第22条3項で、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上控除する損金の額は、別段の定めがあるものを除き、当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額及び当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額とされ、ここで通常の賞与については、販売費、一般管理費その他の費用となり損金の額とされている。
 一方、法人税法第35条で、別段の定めとして、賞与の内、役員賞与(同条1項)、使用人兼務役員のの役員分(同条2項)及び利益又は剰余金の処分としてる経理した使用人賞与(同条3項)については損金不算入と定めている。
 そして平成10年の改正により設けられた法人税法政令第134条の2(以下、“本条”という。)で、使用人賞与のうち未払経理したものの損金算入の時期が定められた。本条のような政令とは、内閣が制定する命令のことで、命令には、法律の委任に基づいて制定される委任命令と法律の規定を実施するために制定される執行命令があるが、当然、国会立法たる法律から独立した、いわゆる独立命令を制定することは許されない(憲法73条六)。
 本条も法人税法第65条で、「第二款から前款まで(所得の金額の計算)に定めるもののほか、各事業年度の所得の金額の計算に関し必要な事項は、政令で定める。」として、極めて包括的な委任規定により制定される法形式をとっている(これによるものとしては、少額の減価償却資産を定める政令133条、一括償却資産を定める133条の2、リース取引を定める政令136条の3などがある。)。
 租税に関し重要な事項を法律で定めるとして租税法律主義を建前とすることからすると、このような広い範囲の委任規定をおく合理的必要があるかは疑問がないわけではない。
 
(2)賞与の損金不算入にかかる法理論
 まず損金算入を制限するとした法律の枠組みを考えてみる。
 第一に、役員に対する賞与についてはいかなる場合には損金算入は認めていない(法35条)。これは使用人に対する賞与(利益処分を除く)が損金に算入されるのと大きく取り扱いを異にしている。
 商法上では、役員と会社との関係は委任とされ(商法254条B)、役員報酬は定款に定めないときは株主総会の決議で定めることを要求している(商法269条)。そして役員賞与は、利益の一部から与えられるものとして269条にいう報酬には該当しないとする説(鈴木竹雄『新版会社法全訂第五版』250頁)と取締役の職務執行の報償である点から区別すべきではないとする説が対立しているが、いずれにしても役員に対する賞与の額の決定は利益処分として株主総会の決議事項であり結論的には差違はない。
 税務上でも、役員賞与を利益の分配ととらえ、利益獲得の費用ではないとして損金算入を認めないこととしている。しかし、役員賞与は、役員に対する追加報酬であるとして、退職給与と同様に損金の額に算入すべきであるという意見も根強い(武田昌輔「役員の給与等と課税の問題点」日税研論集38号1頁)。
 次に利益処分による場合は一律損金性を否定している(法法22Dで、法人の資本等の金額の増加又は減少を生ずる取引及び法人が行う利益又は剰余金の分配を資本等取引と定めている。)。
 使用人賞与を利益処分によるときには法人税法第35条3項で、「内国法人が、各事業年度においてその使用人に対し賞与を支給する場合において、その賞与の額につきその確定した決算において利益又は剰余金の処分による経理(利益積立金額をその支給する賞与に充てる経理を含む。)をしたときは、その経理をした金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。」と定めている。これは、使用人賞与を法人が利益又は剰余金の処分により経理した場合には、利益の分配とすることを法人自らが決めたことから、損金算入を認めない趣旨だと考えられる。
 
2−2 未払賞与の損金性
 前述のように法人税法では22条3項二号において償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しているものは損金の額に算入するとし、従業員賞与についても同様に解される。そして債務の確定については次の要件に該当するものが認められている(法規通2-2-12
 @ 当該事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が成立していること。
 A 当該事業年度終了の日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる   事実が発生していること。
 B 当該事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものである  こと。
 使用人賞与の場合には、会社との雇用契約によって債務が決定されることから、上記要件のように客観的に明確な債務であれば損金性を有すると考えられる。
 未払賞与の損金性についての裁判所での争いも少なくなく、債務確定を裏付ける証明ないし推認されるべき事実の有無についての攻防となっている。
 未払賞与の損金算入が認められたものとしては、従業員に対する決算賞与として期末に未払金経理により損金に計上した債務につき、期末に従業員ごとの賞与の額が決定されていること、決算賞与明細書を作成していること、当該明細書に従業員の各人が確認印を押印していること、翌期において決定額どおりに支給されていることなどからその事実を認めているものがある(昭和57年1月21日裁決、裁決事例集23126頁)。
 逆に損金算入が否認された事例も多く、それらは主に債務の確定すべき事実が認められないとしたもので、事実の仮装や立証すべき資料の不備等によるものも少なくない。
 一例として、平成4年8月6日判決の広島地裁(税務訴訟資料192324頁)の事件では、当該賞与は、従業員個人別の支給決定額を記載し、各従業員の氏名欄に押印をした支給明細書を作成しているが、従業員には当該明細書を見せていなかったと認定し、損金算入を否認している。
 また債務の発生については、「一般に、使用人に対する賞与は、就業規則、労働協約等によりその支給時期、支給額の計算根拠が明示されている場合を除き、賞与を支給するか否か、また、その支給額について、専ら使用者側が決定するものであって、被使用者側が労働の対価である賃金のほかに、雇用契約に基づいて労働の対価として当然に請求し得るものではなく、使用者側が各人別の支給額を決定し、これを被使用人側に通知したときに初めて被使用人側に債権が生じ、使用者に債務が発生するものと解される。」と判示している。また法人税法上、内国法人の各事業年度の販売費、一般管理費その他の費用の当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入しうるためには、当該事業年度終了の日までに債務が確定していることが必要であり、当該事業年度終了の日までに債務が確定しているとは、当該事業年度終了の日までに、(1)当該費用に係る債務が成立しており、(2)当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生しており、(3)当該債務の金額を合理的に算出することができるものである、との各要件をすべて充足する場合をいうものと解するのが相当であるとして、前記通達と同様に債務確定基準によっている。
(同様な事例に最高判平成4年1月23日、税務訴訟資料188107頁がある。)
 
3.使用人賞与の損金算入時期
3−1.法人税法施行令第134条の2
 法人税法施行令第134条の2では、次のように規定されている。
 内国法人が各事業年度においてその使用人に対して支給する賞与の額は、次に定める場合ごと、それぞれに定める事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入するとしている。
 この場合の賞与とは、法第35条第4項(役員賞与等の損金不算入)に規定する賞与をいい、同項第二項に定める使用人兼務役員の使用人分として相当な賞与が含まれる。
 そして本条1号では、 労働協約又は就業規則により定められる支給予定日が到来し、使用人にその支給額の通知がされているもので、かつ、当該支給予定日又は当該通知をした日の属する事業年度においてその支給額につき損金経理をしている賞与については、当該支給予定日又は当該通知をした日のいずれか遅い日の属する事業年度とした。
 2号では、次に掲げる要件のすべてを満たす賞与については、使用人にその支給額の通知をした日の属する事業年度としている。
  イ その支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受けるすべての使用人に対して   通知していること。
  ロ イの通知をした金額を当該通知をしたすべての使用人に対し当該通知をした日の   属する事業年度終了の日の翌日から1月以内に支払っていること。
  ハ その支給額につきイの通知をした日の属する事業年度において損金経理をしてい   ること。
 3号では、前二号に掲げる賞与以外の賞与(法第三十五条第三項に規定する経理がされているものを除く。)については、その支給をした日の属する事業年度としている。
 賞与は、通常、支給額の通知と支給日とが一致しているため、支給日の損金算入が一般的であるが、支給日と支給額の通知とが異なった場合に、本条では、支給額通知日に損金算入による未払賞与の計上に関しては、債務確定基準(法22B二)を認めつつも、厳格な要件を課している。これは平成10年の税制改正において、賞与引当金制度が段階的に縮小、廃止され、これに対応するため法人が決算賞与により、期間損益計算のバランスを図ることが予想されることから、税務執行のトラブル回避のために一定の要件での損金算入のルールを定めたものと思われる。
 
3−2 損金算入時期とその要件
 次にこの要件が妥当なものか、あるいはその問題点は何かについて検討する。
(1)労働協約等による場合
 1号の労働協約等による規定については、通常、労働協約又は就業規則に直接給与賞与の規定を定める場合は少ないと考えられることから、この規定の利用範囲は少ないのではないかともいわれている。
 通常の給与、賞与の定めは給与規程ないし給与基準書によって定められている場合が少なくないが、この場合にはこの規定の適用はないのであろうか。これについて税務実務上は明らかにされていないが、当該給与規程等が就業規則の委任を受け、企業に法的な拘束を課するものであれば、この号の適用を受けるのではないかと考える。
 労働実務においては、ベネッセコーポレーション事件(東京地判平成8年6月28日、労働判例696号17頁)のように、「原告の給与規程(以下、「給与規程」という。)は、就業規則と一体となしており、これには、以下の規定が設けられている」とし、就業規則においては「(給与)四五条 従業員の賃金、昇給及び退職金に関する事項は別に定める給与規程による。」として給与規程に委任している場合には、就業規則と一体であると考えられている。そして、一体としての効力を有することから、いずれかに支給日の定めがおかれていてれば、賞与支給対象者はその規定された支給日に賞与支払請求権を有することになる。
 
(2)支給額の通知及び未払期間の限定
 2号においては、前号の労働協約等がない場合に未払経理した賞与の損金算入の時期を定めている。その中で支給額の通知を定め、、同時期に支給を受けるすべての使用人に対して行わなければならないとしている。1号の労働協約等では「使用人にその支給額の通知がされている」として、2号では「すべての使用人」として若干の相違があるが、1号においては、規約により賞与支払請求権の発生するすべて使用人に支給額の通知がされることは当然である。一方2号においては、当然に賞与支払請求権が発生しているわけではない。そこで、使用人を正社員とアルバイトと区分させている場合にはその区分ごとに判定されればよいこととされる(法基通9-2-32)。また支給日に在職する使用人にのみ賞与を支給することとし、通知後に退職した者には支払わないこととしている場合には、支給額の通知をしたことにはならないとしている(法基通9-2-31)。この場合には、支給をしなかった金額だけでなく、未払金に計上したすべての賞与が損金に算入されないと考えられている。
 賞与の支給額を通知をするという法的な意味合いは、支払通知日に会社は使用人に賞与の支払い義務が発生し、債務が確定する。この賞与支払請求権は、個々の使用人に発生し、支給日前に退職した場合や緊急の場合には、労働基準法の定めに従い、会社は、所定の期間内に賞与の支払い義務を果たさなければならない。
 ただし退職の理由が懲戒解雇などによる場合には別意に解するとの考えもある。心情的には理解できないわけではないが、確定した債務を消滅させる法的な理由付けは容易ではない。使用人に不信行為があり、その結果企業が損害を受けたとするならば、その範囲で損害賠償請求権を有するにすぎないとも考えられる。特に懲戒解雇事由が支給通知後であるならば、支給後に損害賠償の請求をするほかはないと思われる。
 支給通知前の事由により懲戒解雇された場合に、すでに発生した賞与支払請求権が遡って消滅させるためには、当初の法律行為に瑕疵があり取消事由(民法96条など)に該当するのであれば、本号の適用を受ける余地はあるのではないかと思われるが、実務上は容易ではない。
 いずれにしても、通知に関しては、その立証は求められることから通知書等を作成し明らかにしておく必要がある。
 また支払制限として、当該通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から1月以内の支払を要求している。この期間については、長すぎるとか短すぎるといった意見もあるが、企業活動には不測の事態の発生も予想されることから、あえて1月に限定すべきではなかったと考える。
 
(3)1号、2号以外
 3号においては、賞与の支給日に損金算入するという定めで、原則的な取り扱いを定めている。
 
(4)その他
イ 支給日遅延の理由
 賞与は、通常、支給額の通知と支給日が一致するのが一般的であり、本条は、通常例外的な場合の規定であるが、遅延の理由についての定めはおかれていない。本条の趣旨は、「事業年度末において各人別に支給額が通知され、たまたま支給が遅れているといった場合についてまで一切損金算入を認めないのは適当でないとの考え方から、通知をした日の属する事業年度においても損金の額に算入することを認めている(『DHCコンメンタール法人税法』3792頁)」と考えられている。遅延理由については、法人の内部事情があり、法で客観的理由を求めるのは適当ではないが、定められた支給日を遅延するのであるからその理由がなくてもいよいということにはならないであろう。例えば、5月決算法人で5月に賞与額を通知し、6月の通常の夏季賞与と毎期同一日に支払っているとすれば、1月以内の要件には合致するとしても、その理由は明らかにされていなければならない。何故ならば、支給日が毎年繰り返された場合には、決算時の支給日が、当初から確定していなかったと考えられ、たとえ支給額を個人別に通知していたとしても、法的な確定に疑問を持たざるを得ない。
ロ 支払の事実
 今後、支払が行われたかどうかについて課税庁と意見の相違が予想されるが、労働基準法における支払原則に沿って的確に対処されなければならない。
 特に問題となる点は、賞与を金銭で支給した後、直ちに同額ないしその一部を法人が借入れた場合、使用人名義の定期預金として処理された場合や社債(昭和48年11月8日裁決)などによる場合にはには当該賞与の支給事実があるかどうかについて争いとなろう。そこでは、使用者の自由意思、換金の自由、労働法上の違法の有無など判断の材料になるものと思われ、形式のみで判断することはできない。
ハ、近時、多くの企業で業務執行役員制度がスタートしている。に対する賞与については、業務執行役員の地位は、法律上の地位ではないことから、取締役としての地位を有していなければ当然使用人とされる。業務執行役員と会社との関係が、委任契約であるのか雇用契約であるのかは議論の多いところで、委任契約ならば、一般には労働法の適用はなく、契約の終了は容易になる。ただし労働法上は、契約上が委任であっても、その実体によって判断されることから「解雇権乱用の法理」の適用を受ける場合もある(松井真一「執行役員制度をめぐる理論と実務(上)(下)」商事法務1539号75頁、1540号23頁)。
 いずれにしても執行役員の身分は、使用人であることから役員賞与の規程は適用されないので、業務執行役員に対する賞与は、本条の適用をうけることになる。
 
おわりに
 従来、賞与引当金による損金算入が認められていた理由が、法人の賞与の支給時期と事業年度とは必ずしも符合しないため、ある時期に支給された賞与の一部が実は前事業年度の収益と対応関係に立つことがないとして認められていたが、昨年の税制改正により課税ベースの拡大の一環として廃止された。前述したように賞与は、今日では、一般化、恒常化され通常の賃金を補足する給与形態の一部として当初より決められている合が少なくないことは労働実務において一般的で、従来と変わるところがない。本稿とは直接関係はないが、期間損益の把握・計算するためには賞与引当金の繰り入れは認められるべきであろう。
 特に、賞与引当金の廃止などの税制改正によりたことによって、恒久化してきた賞与の支給形態が変質するのではないかという懸念もあり(渡辺淑夫、平川忠雄、大江晋也「座談会、法人税法基本通達等の改正内容と実務上の対応」税理41巻14号154頁)、税制が労働環境に悪影響を与えることがあってはならない。

    

   Last Updated:14/JAN/2000