本文は、税経通信(税務経理協会)99年5号に掲載したものです。だいぶ省略しております。時間がかった割には、ひどい内容です。まず、商法上の知識の無さが、全体に出てしまいました。十分に改正に対応したのか、記述に誤りはないかなど、残念ながら資料不足で確認が十分出来たとは言えませんでした。合併法制の改正は、ボリュームも多く検討が甘くなってしまいました。  これは、主に小会社を念頭に置いて書いておりますので、出来るだけシンプルにして、実務で使えるようにと思って書きました。図や表は、正しく表示されておりませんので、ご了承ください。

会社合併と税務                  H11.3.28  税理士 中江博行
 
はじめに
 近時、我が国企業は国際競争の激化やバブル崩壊などの経済環境の変化に直面し、事業の合理化のためリストラ、不採算部門の整理統合などが求められている。このため企業は、業務提携、合弁、営業譲渡、合併、会社分割やそれらを組み合わせた方式を用いて企業組織の再編を図っている。
 特に、合併(merger)は、M&A(merger and acquisition)に代表されるように近年そのニーズはますます大きくなっている。このような産業界からの要望に応じて、平成9年には、合併手続きの簡素合理化と株主及び会社債権者に対する合併に関する情報開示の充実を図った「商法等の一部を改正する法律」(平成9年6月6日法律第71号)が、平成10年には、や公正取引委員会に対する合併届出の緩和(平成10年5月29日法律第81号)などの合併法制の整備が進み、合併手続きが簡素化、充実化された。
 環境の整備が整ったことから、今後、大企業ばかりでなく中小法人においても、子会社・関連会社の整理、合併による企業再編が予想され、ますます合併による企業再編が活発化するものと思われる。このため本稿では、最近の合併法制と税務上の取扱いについて簡単に見ておくこととする。
 
 
T.合併の法務と手続き
1.合併法制
(1)本質
 会社の合併とは、2以上の会社がその物的人的要素を併合して一つの会社となる法現象であり、人的・物的要素をすべてを引き継ぐ企業結合の最も進んだ形態といえる。この合併の本質については、「人格合一説(人格承継説)」と「現物出資説」の対立の構図においてしばしば説明され、「人格合一説」が通説となっているが、比喩的過ぎるとの批判もあり(田村之輔「合併手続の構造と性格」私法31号149頁)、税法においても繰越欠損金額、減価償却超過額等について合併法人への引継を認めていない点など「現物出資説」の立場も見られることから、一概に「人格合一説」を採ることはできない。法令の解釈では、「人格合一説」が適していると思われる。
 もちろん、合併の本質は、理論的な面については重要であるが、法律から読み切れない判断を求められる場合はともかくとして、合併実務においては重大な影響を及ぼすものではない。
(2)形態
 会社の合併には、合併当事会社のすべてが解散・消滅し、新たな会社に引き継ぐ新設合併と合併当事会社の1つが存続して他の会社が消滅して存続会社が消滅会社の財産及び社員を承継・吸収する吸収合併があり、通常吸収合併が一般的である。このため、本稿では吸収合併について概観する。なお、合併後存続する会社を「合併会社(法人)」といい、合併により消滅する会社を「被合併会社(法人)」という。
 合併は法の特別の規定によって行われ、通常、会社の種類(株式会社、合名会社、合資会社、有限会社)及び目的を問わないが、国外の会社との合併、解散後清算中の会社同士の合併、債務超過会社の合併(法務省民事局昭和56年9月26日民第四5707号)や商事法上の会社と社団法人や宗教法人などの公益法人との合併は認められないなどの制限は設けられている。
 
 一般的な吸収合併の場合の種類別合併の可否

     消滅会社

存続会社

 株式会社

 

 合名会社

 

 合資会社

 

 有限会社

 

 株式会社
 

  ○
(商法56)

   ○
(商法56)

  ○
(商法56)

  ○
(有法59)
 合名会社
 
  ×
 
   ○
(商法56)
  ○
(商法56)
  ×
 
 合資会社
 
  ×
 
   ○
(商法56)
  ○
(商法56)
  ×
 
 有限会社

 
  ○
(有法59)
 
   ×

 
  ×

 
  ○
(有法59)
 
 
(3)合併比率
 合併が決まると、次に重要な事項は、株主の権利・財産保護に重要な意味を有する合併比率を決定することである。この「合併比率」とは、合併法人が合併により新株を交付するにあたり、被合併法人の株式1株に対し、何株割り当てるかという比率をいい、合併当事会社の適正な企業価値の比較によって算定されるべきものである。この企業価値には、企業の計数的な資産価値ばかりでなく、その企業の収益力、社会的信用、特殊の取引関係の存在など有形・無形の価値を含んだところで算定される。
 しかし現実には、その算定方法は、法令等により規定されていないため、以下のような様々の方法が採用されている。
 @ 純資産比較方式
 企業の価値を純資産の価額とみなして合併当事会社の純資産を比較する方法で、ある時点における会社の価値を端的に数値化することができるが、企業の持つ収益力が反映され難い欠点を持っている。
 この方式には、資産・負債の評価の違いにより簿価純資産方式と時価純資産方式に分けられ、次の算式で表せられる。
              簿価(時価)純資産価額
 1株あたりの企業評価額=
                発行済株式数
 
 A 株価比較方式
  上場会社の場合には、取引所等の株価が企業価値を客観的に評価していると考えられることから、株価を基に合併比率を算定する方法で、この方式には、一定期間の株価の平均値を基に算出する市場価格方式と非上場会社の場合に他の公開会社の株価を基に算出する類似業種(会社)比準方式がある。
 類似業種比準方式では、国税庁の定める業種のうち評価対象会社の類似する会社の株価と当該会社の1株当たりの配当金、利益、純資産を比較して算出し、非上場であることの流動性を勘案して、その70%相当額で評価することとしている(評基通180)。次に算式で表す。
 
        類似業種配当  類似業種利益  類似業種純資産
類似業種 ×  評価会社配当+ 評価会社利益+ 評価会社純資産    ×0.7
 株価                3
 
 B 収益力比較方式
  合併当事会社の企業価値は収益力が表すと考える方式で、この収益力を図る基準として将来の損益状況を予想して算出する収益還元方式や将来の予想配当金額を基に算出する配当還元方式などがある。
 収益還元方式は、    利益  
            資本還元率
 で表されるが、収益の将来予想や資本還元率の設定が困難となる。
 
 C 併用方式
 @からBの全部もしくは一部を併用して、それぞれの結果の単純平均又は加重平均によって比較する方法である。
 
 いずれにしても、中小法人では@ないしAの方法あるいはその併用方式によるのが一般的であろう。
(注)上場会社の合併比率の算定方式の実態調査に基づい貴重な検討が行われたものとして、山崎克也「上場会社の最近の合併・営業譲渡等に関する実態調査[上][下]」商事法務1405号25頁、1406号35頁がある。
 
2.合併手続
(1)概略
 会社が合併するには、当事会社の代表取締役が法定事項を記載した合併契約書を締結して行う(商法408、409他)。これにより定款の変更(次項の簡易合併の場合を除く)、新株式の発行・割当、増加する資本金等、合併承認総会日、合併期日や従業員の処遇などの合併条件や当事会社の遵守事項などが定められる。合併契約書は株主(社員)総会の特別決議による承認を必要とし(商法343、348)、その決議の日から2週間内に、その債権者に対して異議があれば一定期間内にこれを述べる旨を公告(官報又は日刊新聞紙、商法412)等しなければならない。
 合併期日後の一定期間内において合併法人では変更の登記を、被合併法人では解散の登記をするとともに、存続会社では、債権者保護手続きの経過、合併期日、合併により消滅した会社より承継した財産の価額、債務の額、その他の事項を記載した書面を合併の日より6ヶ月間公開することが要求される(事後開示の制度、商法414ノ2)。  
(2)簡易合併
 平成9年の商法等の改正によって、合併契約書承認のための株主総会を不要とする簡易合併制度が創設された(商法413ノ3)。これは、吸収合併の場合で存続会社の規模が消滅会社の規模を著しく上回るような場合には、存続会社に合併承認のために特別な株主総会による決議を要求しないとしても、株主の利害に重要な影響を及ぼすことも少ないであろうし、むしろ簡素化・合理化を図った方が迅速性やコストが失われないと考えられるためである。ただし簡易合併の手続きは、消滅会社には適用されない。
 次に具体的な簡易合併の要件等をあげておく。
 イ.簡易合併をすることができるのは
 @合併後存続する会社が合併に際して発行する新株の総数がその会社の発行済株式の総数の20分の1以下であり(1項)、かつ
 A合併交付金の金額が最終の貸借対照表により存続する会社に現存する純資産額の50分の1以下である場合(1項但し書き)が要件となっている。
 このため、100%子会社を吸収合併する場合には通常新株の発行も合併交付金の支払いもないため、上記の簡易合併の要件を充足する場合が少なくない。
 ロ.合併契約書には、存続する会社については株主総会の承認(商法408@)を得ずに合併をする旨を記載しなければならない(3項)。
 ハ.存続会社は合併契約書の作成した日から2週間以内に消滅会社の商号及び本店、合併をすべき時期ならびに株主総会の承認を得ずに合併をする旨を公告し又は株主に通知しなければならない(4項)。
 ニ.存続会社の株主は、株主に対する公告又は通知の日から2週間以内に会社に対して書面で簡易合併に反対の意思を通知することができる。
 ホ.簡易合併に反対の意思を通知した株主の有する株式が存続会社の発行済株式の総数の6分の1以上である場合には簡易合併をすることができない(8項)。
 ヘ.有限会社は簡易合併方式を採用することはできない(有63@)。
 
(3)独占禁止法上の負担軽減
 平成10年5月29日の独占禁止法の改正によって、合併届出制度の軽減措置が設けられ,平成11年1月1日以降の合併期日から適用されている(独禁法15条AB)。
 従来は、すべての国内会社は合併する場合には、事前に公正取引委員会に届出が必要とされ、届出をしてから通常30日間は合併をすることはできないとされていたが、改正によって、次のような場合には届出が不要となった。
 @ 総資産合計額が100億円超の国内会社と総資産合計額が10億円超の国内会社との合併以外の小規模会社間の合併(3社以上の合併の場合には、そのうちのいずれか2社の総資産合計額が100億円超と10億円超の会社があればその他の会社が10億円以下でも届出は必要になる)
 A 存続会社のうち、いずれか一の会社が他のすべての会社のそれぞれの発行済の株式の総数の100分の50を超えて株式を所有している場合(親子会社間の合併)
 B 存続会社のそれぞれの発行済の株式の総数の100分の50を超えて株式を所有する会社が同一の会社である場合(兄弟会社間の合併)
 
         A社                         
       (親会社)      親子会社間の合併A ・・ A社とB社の合併
                              A社とC社の合併
                  兄弟会社間の合併B・・ B社とC社の合併
  B社          C社
 (子会社)       (子会社)
 
  → は,50%超の株式保有
 
 
(4)合併スケジュール(株式会社)
 イ、タイムスケジュール
 株式会社同士の合併で簡易合併の適用があり、かつ公正取引委員会への届出不要の場合の日程表モデル(存続会社、消滅会社は9月決算)

  存続会社(簡易合併)

 日程例

    消滅会社

 合併契約書承認取締役会

 合併契約の締結

 簡易合併公告
 債権者異議申述公告






 合併期日

 合併登記(変更登記)
 

 7月14日

 7月15日

 7月16日

 8月25日

 8月26日

 9月26日

 10月1日

 10月2日
 

合併契約書承認取締役会

合併契約の締結

株主名簿閉鎖公告

(臨時)株主総会

 債権者異議申述公告

 債権者異議申述期限

 合併期日

 合併登記(解散登記)
 


















 
 
ロ.簡易合併登記のための添付書類(商業登記法90条他)
 @ 合併契約書(正本)
 A 存続会社の取締役会議事録
 B 消滅会社の株主総会議事録
 C 債権者異議申述催告書
 D 官報等(正本)
 E 上申書(所定の期間内に異議を申し述べた債権者がいなかったこと)
 F 消滅会社の登記簿謄本
 G 存続会社の最終の貸借対照表
 H 資本の限度額を証する書面(注)
 I 委任状 など
 
(注) H「資本の限度額を証する書面」
















 

     資本の限度額を証する書面(記載例)

@ 消滅会社甲社から承継する財産の価額   200,000,000円
A 消滅会社から承継する債務の額      160,000,000円
B 合併交付金                  なし
C 法第409条の2の規定により消滅会社の株主に移転する株式に
  会計帳簿に記載した価額            なし
D 増加する資本の限度額
    @−A−B−C= 40,000,000円

上記の通り相違ありません。
    平成*年*月*日
           存続会社   住所
                  商号
                  代表取締役
 
















 
 
 
U.合併の税務
  合併法人の税務は、被合併法人の税務と合併法人に対する税務に大別される。そのうち被合併法人には、@最終事業年度(被合併法人の合併の日の属する事業年度)の所得に対する課税と、A清算所得に対する課税が、合併法人には合併差益に対して課税される。
 また被合併法人の株主に対してはみなし配当と身代わり株式の付け替え計算が必要となる。
 なお、本節では,主に株式会社同士の吸収合併を想定している。
 
1.被合併法人の税務
(1)最終事業年度に対する課税
 被合併法人が事業年度の中途において合併により消滅した場合には、その事業年度開始の日から合併の日(合併期日の前日)までの期間を1事業年度とみなして通常の各事業年度の所得に対する課税と同様に課税される(法14条二)。役員退職金については、合併承認総会において確定されない場合でも、被合併法人がその金額を合理的に計算し、最終事業年度において未払金として損金経理したときは被合併法人において損金算入される(法基通4-2-11)。これは費用の債務確定性に関して問題はあるが、合併という特殊性を考慮し、被合併法人の役員退職給与は本来被合併法人が負担すべきものと考えられることからこのような取扱いとなったものと思われる。
 また、法人税法、租税特別措置法に規定する引当金、準備金等については被合併法人の最終事業年度においても繰り入れることができる。この場合の引当金等は、被合併法人で損金に算入された額を限度として合併法人への引き継ぎが認められるが、合併法人に引き継がれなかった金額は被合併法人の最終事業年度において益金の額に算入される(法令98条ほか)。
 被合併法人の最後(最終)事業年度に係る事業税は、本来は被合併法人が負担すべきものであるが、事業税の損金算入時期は、原則として、翌事業年度になっていることもあり(法基通9-5-2)、被合併法人の納税義務を負う合併法人において事業税の額が具体的に確定した事業年度の損金の額に算入することとなる(法基通4-2-13)。
 また、合併の日の属する事業年度の欠損金額又は合併の日前1年以内に終了したいずれかの事業年度の欠損金額があるときは、その欠損金額に係る事業年度開始の日前1年以内に開始する事業年度に繰り戻して還付請求することができる(法81条@C)。
 
(2)清算所得
 合併による清算所得の金額は、被合併法人の資産の評価益の計上又は評価益に対する合併交付金が交付される場合に生ずる。そしてこの清算所得の金額は、次の@からAを控除した金額とされている(法112条@)。
@ 被合併法人の株主等がその合併により合併法人から交付を受ける合併法人の株式又は出資の価額の総額並びに当該交付を受ける金銭及びこれらの資産以外の資産の価額の総額の合計額
A 被合併法人のその合併の時における資本等の金額及び利益積立金額の合計額
     図省略

 この場合の資本等の金額及び利益積立金額については、次の金額を控除する(法112条B)。
イ 被合併法人の株式を合併法人が有していた場合(抱合株式)において、当該株式に対して新株等を割り当てなかった場合、資本の金額又は出資金額のうち、その割り当てなかった当該被合併法人の株式等に対応する部分の金額
ロ 合併に際し、被合併法人の資本積立金額が合併法人に引き継がれた場合、その引き継がれた資本積立金額
ハ 合併に際し、被合併法人の利益積立金額が合併法人に引き継がれた場合、その引き継がれた利益積立金額
 被合併法人の株主に交付する新株に1株未満の端数が生ずる場合には、それら1株未満の新株の合計を他に譲渡し、その譲渡代金を1株未満の株式の株主に分配する場合には、その1株未満の株式の譲渡代金の交付を受ける株主に対して、その1株未満の株式に相当する新株が額面金額にて交付されたものとして清算所得の金額を計算する(法基通19-2-3)。
   
2.合併法人の税務
(1)合併差益金
 合併差益金は、合併法人が被合併法人から受け入れた受入金額と被合併法人の株主に交付した合併法人の株式及び合併交付金等の合計額の差額として現れる(法2十九)。
 この合併差益金は、次の要素から構成される。
@合併減資益金からなる部分の金額
A被合併法人の資本積立金からなる部分の金額
B被合併法人の利益積立金からなる部分の金額
C受入資産の評価益からなる部分の金額
 このうち、@Aは資本等取引(法22)であり、Bはすでに課税済み(法27)であることから課税されないが、C受入資産の評価益については法人税が課税される。
 なお、合併差益金の構成順序は次のように定められている(法令9@)
@ 合併法人の純資産の受入価額が被合併法人の純資産の帳簿価額以下である場合
 イ 合併減資益金  ロ 資本積立金 ハ 利益積立金
 
A 合併法人の純資産の受入価額が被合併法人の純資産の帳簿価額を超える場合
 イ 受入資産の評価益  ロ 合併減資益金  ハ 資本積立金 ニ 利益積立金
 
    被合併法人B/S         評価益を計上し合併法人へ受入
        図省略

(2)受入資産
イ 受入価額
 合併法人が被合併法人から受け入れた資産の受入価額は時価以下でなければならないとされ、被合併法人の帳簿価額が時価以下であれば帳簿価額で受け入れても良い。逆に帳簿価額を超えて受け入れれば評価益として益金となる(法基通4-1-2)。
 減価償却資産の受入価額も同様であるが、受入減価償却資産の耐用年数は中古資産の耐用年数によらず従前の法定耐用年数による(法基通4-2-15)。また償却方法は、原則合併法人が採用している償却方法によるが、合併法人がその減価償却資産を合併のときに新たに取得し、又はその合併により増加することになる事業所を新たに設けたものとして、所定の届出(法令51条A)をして合併法人と異なる償却方法を選定することも可能である(法基通7-2-4)。
 
ロ 資産の税務否認金
 被合併法人に税務上の否認金(減価償却超過額又は評価損益の否認金を除く。)がある場合に、合併法人がその否認金のある資産、負債等の受入価額を税務上の金額に修正しないで被合併法人の帳簿価額としている場合の合併差益金の計算については、被合併法人の受入資産の帳簿価額は、次のように税務否認額を調整したところで計算する(法基通4-2-4)。
 @ 簿外資産、簿外債務等、税務計算上資産又は負債として否認されたものは、合併法人が本来受け入れるべきものであるから、その否認金に相当する資産又は負債は合併法人に受け入れられる。
 A 引当金、準備金の繰入限度超過額があった場合には、法人計算の引当金、準備金を超過額分だけ減額する。結局は、それら繰入限度超過額分だけ利益積立金額の引継ぎが行われたことになる。
 B 未経過費用などの費用の否認金については、その否認金に相当する金額の資産と利益積立金額の引継が行われたことになる。
 C 架空又は過大計上資産などで被合併法人が資産に計上していたものが税務上資産に該当しないとして損金の額に算入されたものについては、その資産の受入はないものとするとともにマイナスの利益積立金額の引継ぎがあったものとする。
 
ハ 償却超過額などの否認金
 被合併法人から引き継いだ減価償却資産や棚卸資産等について償却超過額又は評価損益の否認額がある場合に、合併法人がそれら償却超過額等の修正を行い引き継いだ場合には、それが認められるが、合併法人がこの帳簿価額を修正しなかった場合には、被合併法人の償却超過額等の否認金は合併によって打ち切られ、合併法人には引き継がれない(法基通4-2-14)。
 しかし、合併法人が被合併法人の計上した帳簿価額によって受け入れた資産について、合併後の被合併法人の税務調査等によって償却超過額等の否認金があった場合には、合併法人がその判明した事業年度において否認金額に相当する金額を修正することを申し出たときに限り税務計算上の金額により受け入れたものとされる(法基通4-2-5)。
 
ニ 繰越欠損金と営業権
 救済合併の場合には被合併法人に繰越欠損金があるものと思われるが、繰越欠損金のある法人を被合併法人として合併した場合には、合併法人はその繰越欠損金を営業権として受け入れている場合が多い。
 この場合には、次のように取り扱われている(法基通4-2-8)。
 @ 被合併法人から受け入れた資産に含みのものがある場合には、その含みのある資産については、その受入価額にその営業権の受入価額に達するまでの含み益に相当する金額を加算した金額に相当する帳簿価額により受け入れたものとし、その営業権の受入価額については、その含み益に相当する金額を減額する。
 A営業権の受入価額になお残額がある場合には、その残額について、その被合併法人の営業権の価額として相当であると認められる価額を限度としてその営業権の受入れが認められる。
 なお、合併法人の受け入れた営業権の受入価額のうちその受入が認められない部分の金額、あるいは実際の含み以上の価額による受入が行われた場合の過大評価部分の金額については、合併法人が、被合併法人が利益積立金額及び資本積立金額を引き継いでいる場合には、、引き継いだこれら積立金額のうちその否認金に達するまでの金額は、まず利益積立金額、次に資本積立金額の引継ぎがなかったものとし、なお否認金に残額があるときは、その残額は合併法人の利益積立金額から控除する(法基通4-2-7)。
 
(3)さかさ合併
 通常の吸収合併では、欠損金のない法人が欠損金を有する法人を合併する場合が一般的であるが、前述のように合併法人が、被合併法人の有する繰越欠損金を引き継ぐことはできないため(法基通4-2-18)、繰越欠損金のある法人が合併法人になり、欠損金のない法人を被合併法人として吸収合併する場合がある。このような合併を「さかさ合併」という。さかさ合併が明らかに租税回避だけを目的として行れるときは、税務上、繰越欠損金の損金算入が否認される。
(注)被合併法人の欠損金の繰越控除については、最高裁昭和43年5月2日判決(民集22卷5号1067頁)があり、さかさ合併については、広島地裁平成2年1月25日判決(行集41卷1号42頁 )などがある。
 
(4)抱合株式の消却
 合併に際して合併法人が被合併法人の株式(抱合株式)を保有している場合には、合併法人の株式を自己に割り当てることになってしまうが、通常はこのような抱合株式に対しては新株を発行しないで消却する場合が多い。この場合の抱合株式を消却したことにより生じた消却損の額は損金の額に算入されずに、次の順序で補填される(法基通4-2-9)。
@減資益に相当する金額、A資本積立金額、B利益積立金額、C合併差益金のうち@からBまでに掲げる金額以外の金額、D 受入資産の含み益。
 なお、抱合株式を額面金額より低い価額で所有していた場合には、株式の消却により差益金が生ずるが、この差益金は合併事業年度の益金の額に算入される(法基通4-2-9の2)。
   図省略

 
3.株主に対する課税
(1)みなし配当
 被合併法人の株主が、合併により新たに合併法人から合併新株式及び合併交付金等の交付を受けた場合において、これら交付株式等は、被合併法人の拠出資本(資本金、資本積立金)の払戻しから成る部分と利益積立金及び清算所得金相当額の課税済所得の分配に当たる部分から成っている。この課税済所得の分配に当たる部分をみなし配当といい、法人株主と個人株主とでは、みなし配当の計算は異なる。この相違は、法人株主の所有する株式は帳簿価額が付されているのに対し、個人株主では帳簿を前提としていないためである。
 
イ 法人株主
  被合併法人の法人株主が、合併法人から交付株式及び合併交付金を受けた場合に、それら株式、金銭等の合計額が,旧株の帳簿価額を超えるときは、その超える部分の金額のうちに被合併法人の資本等の金額からなる部分の金額以外は、利益の配当又は剰余金の分配とみなされる(みなし配当、法24@)。
 なお、みなし配当を計算する場合に、被合併法人の資本積立金額が合併法人に引き継がれたときは、その額を被合併法人の資本等の金額から控除する(法基通3-1-9)。
    図省略

ロ 個人株主
  被合併法人の個人株主が、合併法人から交付株式及び合併交付金を受けた場合に、それら株式、金銭等の合計額が,被合併法人の資本等の金額のうちその交付の基因となった株式に係る部分の金額を超えるときは、その超える部分の金額は、資本積立金額を引き継がない場合、利益の配当又は剰余金の分配とみなされる(所法25@)。
 なお、みなし配当の金額は、配当控除の対象となる(所法92)。
    図省略

(2)身代わり株式の付替え計算
 被合併法人の株主は、合併により被合併法人の株式を失い、代わりに合併法人から合併交付株式(身代わり株式)を取得するが、この場合には、この取得した新株式の取得価額の計算が必要になり、以下のように計算される(法令44@、所令114@)。
 
イ 法人株主
 a 合併により新株式のみを取得した場合
  新株式1株当たりの取得価額=
      旧株式1株の   +  旧株1株について受けた
      従前の帳簿価額     みなし配当金額     
        旧株1株について取得した新株式の数
 
 b 合併により新株式及び合併交付金等を取得した場合
  @ 新株式の価額と合併交付金等の額の合計額が旧株式の帳簿価額を超えない場合
  新株式1株当たりの取得価額=
      旧株式1株の   −  旧株1株について交付を
      従前の帳簿価額     受けた合併交付金    
        旧株1株について取得した新株式の数
 
  A 新株式の価額と合併交付金等の額の合計額が旧株式の帳簿価額を超え、かつ、新株式の価額が旧株式の帳簿価額以上である場合
  新株式1株当たりの取得価額=
      旧株式1株の   +  新株式の額面金額等に含まれる
      従前の帳簿価額     みなし配当金額      
        旧株1株について取得した新株式の数
 
  B 新株式の価額と合併交付金等の額の合計額が旧株式の帳簿価額を超え、かつ、新株式の価額が旧株式の帳簿価額に満たない場合
  新株式1株当たりの取得価額=取得した新株式の価額
 
ロ 個人株主
 a 合併により新株式のみを取得した場合
  新株式1株当たりの取得価額=
      旧株式1株の   +  旧株1株について受けた
      従前の帳簿価額    みなし配当金額     
        旧株1株について取得した新株式の数
 
 b 合併により新株式及び合併交付金等を取得した場合
  新株式1株当たりの取得価額=
      旧株式1株の  + 旧株1株について受けた − 旧株1株の
      従前の帳簿価額   みなし配当金額       合併交付金
        旧株1株について取得した新株式の数
 
 
おわりに
 商法や独禁法の改正によって、会社の合併はより容易になってきた。特に長期化する不況を乗り切るためには、多くの会社にとって機構改革は避けて通れない。このため会社合併は今後も増加すると思われる。
 しかし、複雑な手続きや課税関係が発生すれば、それだけ多くのコストとエネルギーを費やすことになってしまうことから、できるだけシンプルな形で合併を進めるべきであり、そのための準備が必要となる。
 当初述べたように法人の機構改革は、合併だけにとどまらない。同じ効果を得るものとして会社分割があり、これらは両極端なものではなく、会社の整理統合という面では同じ効果がもたらされる。しかし会社分割については、商事法上の規定はないため、今のところ完全な会社分割は困難であるが、今後法整備が進めば、合併と同様に企業再編の手法として有効となろう。
 最近では、特に商事法上の整備には目を見張るものがあり、平成11年2月16日には「商法等の一部を改正する法律案要綱」が取りまとめられ、株式交換・株式移転による完全親会社の創設が示された。これに対応する形で平成11年の税政改正でも一定の要件の下に課税の繰延べ等の措置が講じられた(措置法37条の13の2、同法67条の9の2、措置法施行令25条の12の2,同令39条の30の2)。これにより我が国における特定の支配会社間の組織変更による株式の移転も、米国税法がこれら移転が直接株主に利益を与えないとして原則非課税等となっているものと同様な措置がとられることになった(IRC351)。税制上の優遇措置がとられることは、企業の組織変更には有利となるが、租税回避の道を付けることにならないように注意すべきであろう。いずれにしても、商事法上の整備は直接、税制上にも影響することから会社の組織変更に対する税制の動向には、今後も注視しておかなければならない。
                        以上
参考文献
 大沼長清他編『合併・分割』ぎょうせい
 通商産業省産業政策局産業組織課編『会社合併・分割の現状と課題』別冊商事法務187号
 高木文雄監修『会社の合併・分割・清算・更生』清文社
 河本一郎編『改正 会社合併の税と法務』三省堂
 石角完爾『会社合併実務の手引』新日本法規
 朝長英樹「合併・営業譲渡をめぐる税務上の取扱い」金融法務事情1450号24頁
 尾関純「子会社・関連会社の合併・清算の全て(1)〜(3)」
           週刊税務通信2561号49頁、2562号15頁、2563号7頁
 菊池洋一「新しい合併手続のポイント」金融法務事情1487号6頁
 法務省民事局参事官室「商法等の一部を改正する法律案要綱の概要」
                      ジュリスト1152号130頁

    

   Last Updated:18/APR/1999