会社分割にかかる税法上の諸問題 97.9.23     

第五章 総括

会社分割は,現行商法には直接的な規定としては置かれていないが,現実には,それに変わる方法が採られ,租税法でも特定の現物出資などの規定を設けて分社としての会社分割が行われている。現実に会社分割が行われるから良いというものではなく,合併の場合に会社債権者の保護が必要であると同様に分割の場合にも被分割会社の債権者等を保護する必要があること,コーポレイト・ガバナンスからみた時に資本の分割が必要な場合も少なくないこと,また制度上疑義がないよう明確な規定をおくべきであることなどから,商法典中に会社分割の規定が設けられる必要性が叫ばれている(注1)。

本稿のテーマは,会社分割における租税回避の可能性とそれをどのように回避するかを検討することにあった。そこで,第一章では,会社分割が,何故,今,今日的な問題になっているのかと租税回避との関係が深いことを触れた。第二章では,ここで取り上げる会社分割の目的や会社分割がどのように法制化されるのかを諸外国の会社分割の方式を含めて整理した。第三章では税務上の立場から,現在,我が国の会社分割(分社)と米国の会社分割(組織変更などを通じて)を取り上げた。これらをふまえて,第四章で会社分割が法制化された場合に,租税回避の面から租税法上の問題を検討し,租税回避が,どのような場合に考えられるか。そしてそのための対策はどのような方法があるかを簡単であるが検討した。しかし残念ながら,租税回避の可能性やその対策方法については,ほんの一部しか検討することができなかった。また,米国における会社分割に於いて,株式の他に不適格資産(boot)の交付をする場合もあるが,これらについては設例を複雑にしないため触れていない。
我が国でも実際に法制化される段階では,この様な交換差金の取り扱いも検討しておかなければならない。
本稿に於いて会社分割についての検討を進めている最中,丁度時期を同じくしてNTTの分割の方向が示され,持株会社による分割が打ち出された。この場合の税務上の問題点について最後に触れておきたい。
現在のNTTは,純粋持株会社となり,その下に長距離通信会社と二つの地域通信会社に再編成されると言う。この場合の地域通信会社は1社の売上高は年間3兆円,従業員数もそれぞれ8万人を超える大子会社が出現する。現有NTT株主は純粋持株会社の株式の所有を通じて分割会社を間接的に所有することになる。これら大規模な分割会社の資産が大半賃貸で資本金の少ない法人が出現するというのはあまりに不自然であるので,これら分割会社は現NTTの資産の移転(出資)を受けることになるであろう。この場合に譲渡益の課税を回避するためには,現行の特定出資のよる課税上の特例による手当では,完全にカバーすることは困難であろう。現行法で100%の圧縮ができないものを新たに譲渡益を認識させない立法措置を採る場合には,一般の会社分割でも同様な取り扱いをすべきである。何故ならば,再三述べてきたことだが,法の整合性という観点からしても,NTTのみ特別扱いにする理由はないからである。
また,NTTの第11期の貸借対照表(平成8年3月31被現在)では,おおむね資産合計11兆1千億円,負債合計6兆7千億円,資本金8千億円,その他剰余金等は3兆6千億円となっている。これら財産移転を通じて新設の地域通信会社は,持株会社である親会社以上の資本金の会社となるのか,あるいは剰余金等をも承継させるのかは,未だ明らかにされていないが,ここで取り上げた一般の分割ともからみ今後注視していきたい。

会社分割にかかる法制が設けられたときに,税法上は,現行の課税ベースを極端に崩すことなく分割法制を有効なものとすべく課税上の講じる必要があるであろう。
この場合に,会社分割という会社の人格の同一性が保たれた関係において認められるべきであると考える。この場合の「人格の同一性」の認識する要件として,米国における基本原則を参考にしつつ,我が国の経済構造にあった原則を見いださなければならない。
また,現状での分社化に於いての税務上の取り扱いすら多岐にわたる定めを置いていることを思うとき,今後予想される会社分割税制においては,今後,細部についての検討がなされなければならないであろう。そしてそれは,法令化され,明確な規定を示さなければならない。

以上

(注1) 中西敏和氏は,「会社分割の問題は,現在検討中の合併規制等と同様企業結合法制という観点からとらえられるべき事項であり,その意味からは,会社分割独自の法規制が望まれる。」として,またそれに続けて,「会社分割に対する十分な法規制がしかれる限り,会社分割には十分な効果が期待できる。組織の肥大化による大企業病を避け,小回りのきく組織のもとで従前どおりの営業活動を行おうとすれば,会社分割は避けて通れない手続きであり,副次的な義務の事業化をはかる場合にも会社分割は有用な手続きである。」と指摘されている。(「会社分割規制に係る商法・税法改正による影響」商事法務1,256号7頁)


    

Last Updated: 12/OCT./1997